イギリスは日本からの移住先として向いているのか?税金に注目して検討してみた
Big Ben and Houses of Parliament, London, UK

英国に移住して個人事業を成功させたい、そんな思いを描いている方、また英国に自社の子会社を作りたい、そう考えている方は案外多いのではないでしょうか?

しかしながら、英国はBirxitで欧州ヨーロッパ連合からの脱退を発表したり、様々な制度が目まぐるしい速度で変更されています。

イギリス移住のステップとして、イギリスにおける税金の仕組みを知りたい、また実際に移住して事業を行いながら生活していけるのだろうか、そんな方に向けて、今回は日本とイギリスでの税金の違いについて詳しくお伝えしようと思います。

~イギリスの税金 日本と違うところは?~

まずは日本とイギリスの税金の違いについて。基本的に納める税金の種類は似ていて、おおよそこの6点が関係してきます。

自営業やフリーランサーの方は、日本同様税務申告後に所得税とともに国民保険料を支払うことになります。
会社員の方は、日本同様雇用主が国民保険料および源泉徴収を行ってくれます。
雇用主となる方は、④⑤⑥の3つが重要になります。

①所得税
②Council Taxまたは住民税
③個人事業税(日本のみ)
④法人税
⑤付加価値税(VAT)
⑥ビジネスレート

それでは1つずつ詳しくみていきましょう。

①所得税(国税)を比較してみた

日本の所得税は最低税率5%から最高税率45%、イギリスの所得税は最低税率0%から最高税率は45%で、累進課税制度になっています。違いとしては、日本の税率は課税所得の金額に応じて7段階ですが、英国では4段階です。

表1

イギリスでは、12571ポンド(約189万円以上50270ポンド(約754万円)までの幅広い層の方が所得税率20%の対象者となっています。日本の場は、695万円以上の方から税率が23%となっているので、所得が695万円を超え、50270ポンド(約754万円)以内の方ですと、所得税に関してはイギリスの方が節税となるでしょう。

しかしながら、英国で50271ポンド(約754万円)を超える所得となってしまうと、一気に所得税が40%に跳ね上がってしまうので、注意しなければなりません。

②住民税とCouncil Tax(カウンシルタックス)を比較してみた

日本での住民税と似たようなCouncil Taxという住居用財産にかかるイギリスの地方税です。日本ではこの税率は大体10%程度となっていますが、イギリスでは住居を構える都市によってその支払うカウンシルタックスは大幅に異なってきます

AからHまでの8つの価格帯に分類し、価格帯ごとに税率を定めるBandingSystemが採用されています。地価評価額が年々上昇してきているイギリスにおいては、このCouncil Taxも年々増加傾向にあります。ただしこちらもシングル居住者や学生に対しては25%の割引が適用される減税措置もあります。

またこのカウンシルタックスですが、ロンドン等の都市部と郊外ではこの支払額が大きく変わってくるので、居住地の節税対策としては、郊外に住むことをおすすめします。イギリスのインフラは日本同様非常に整っているので、郊外居住でもそれほど不便に感じることはないでしょう。

またここで重要なのが、このCouncil Taxが家賃に含まれている物件も比較的多いという点です。家を探す際に、all bills included等と記載されている場合がありますが、その場合はCouncil Tax、水道料金、ガス料金や電気料金なども含まれている場合があるので、詳細を不動産会社に問い合わせて確認してみると良いでしょう。また、日本のようなふるさと納税や生命保険控除等による減税はありませんが、明確でわかりやすく、自身で政府のホームページから調べられることで、それをもとに居住地を決定することができるといった、メリットもあります。

Council Taxを調べたい方は、下記のアドレスよりポストコード(郵便番号)もしくは住所を入力することで調べることができます。(英語のみ)
https://www.gov.uk/council-tax-bands

③個人事業税は日本とイギリスどちらがお得か?

個人事業税は日本では地方税(都道府県に対して納税するもの)の1つになります。事業所得が290万円を超える場合に課税される税金です。日本では指定の70種に対して3%から5%の個人事業税が課せられます。この個人事業税ですが、イギリスではこれにあたるものが存在しません。税金のほどんどが国税(地方税は上記のCouncil Taxのみ)であるので、日本でこの指定の職種の自営業をされている方、もしくは経営者の方にとっては、大きな節税のメリットがあります。

④法人税が2023年に改正されることによる恩恵が得られる可能性も

英国での法人税率はこれまで一律19%となっていましたが、今年度、英政府は約半世紀ぶりに法人税率を引き上げることを発表しました。

23年4月から適応が開始しますが、年間利益5万ポンド未満の企業は19%のまま据え置かれますが、5万ポンド以上25万ポンド未満の企業には、25%未満の逓増税率(段階的に引き上げられる)で課税されることになります。年間利益が25万ポンド(約3750万円)以上の企業では25%に引き上げられます。

ただしここで重要なのが、日本企業が英国に外国子会社を設立する場合です。今回この制度が適応されることにより、外国関連会社の租税負担割合が20%(いわゆる「トリガー税率」)を超えると、CFC(Controlled Foreign Company)税制の対象外となることにより、英国に外国子会社を設立した場合の外国子会社の年間利益が5万ポンドを超える場合は、この恩恵による節税効果を得られる可能性がでてきました。この改定は経営者の皆様にとって、とてもありがたい改正となるはずです。

CFC(Controlled Foreign Company)税制 … タックスヘイブン対策勢制または外国子会社月山税制ともいうが、一定条件に該当する外国子会社の所得を日本の親会社の所得とみなして合算し、日本で課税する制度

また、この法人税に関しても減税措置対象があります。
ジェトロのホームページに詳細がまとめられていますので、そちらも参考にしてみると良いでしょう。
https://www.jetro.go.jp/world/europe/uk/invest_04.html

⑤付加価値税(VAT)および関税について

イギリスにも国に納めるべき税金、付加価値税(VAT)があります。

これは日本での消費税と同様ですが、異なる点としては、日本では標準税率が10%、軽減税率が8%となっていますが、イギリスでは標準税率が20%と非常に高いです。また2021年にイギリスがEU完全離脱したことにより、企業が支払わなければならないVATの負担が増えています。

しかしながら現状、家庭用燃料・電力の供給、高齢者・低所得者を対象とした暖房設備・防犯用品等、チャイルドシート、避妊用品等は軽減税率(5%)が適応される点、そしてVATがかからないゼロ税率品目も存在しており、書籍(新聞・雑誌含む)や食品、子供服(14才未満)がそれにあたります。

また関税に関して、2021年1月のブレグジットにより、EUからイギリス、またイギリスからEUへの全ての貨物に税関申告が必要になった点が非常に重要です。そして2021年7月には、輸入VAT非課税基準枠の撤廃が変更され、EU域内への全ての輸入貨物が税関申告の対象になっている点も注意しなければなりません。

⑥その他税制に関して
ビジネスレートについて~
非居住用不動産に課せられる固定資産税として、店舗・事務所・倉庫・工場などを構える場合には、ビジネスレートがかかります。日本の固定資産税と異なる点としては、日本では不動産所有者が支払いますが、英国では不動産使用者に支払い義務があります

近年英国全体で不動産価格が全体的に上昇しており、不動産価格に連動してこの税金も上昇していくため、年々かかる税金が上がる可能性がある点も考慮しなければなりません。また、収入の有無に関わらず、定額を支払わなければなりません。(※現在新型コロナウイルスの影響で減免措置もとられています。)

ビジネスレートに関してはこちらのサイトよりPOST CODE(日本での郵便番号)もしくはアドレスを入力することで調べることができます。
https://www.gov.uk/calculate-your-business-rates

まとめ

本記事では、日本からイギリスに移住する際の税金に着目して解説してきました。
日本とイギリスでは、税金に関して似ている部分も多く、政府のホームページに明確な記載があるため、個人で調べること出来る点がイギリスは非常に優れています

個人事業税がイギリスでは課せられない点は非常にメリットがあります。そして、2023年に改正予定の法人税率引き上げにより、日本企業が英国に外国子会社を設立する場合に節税効果を得られる可能性が出てきたことも非常にメリットになることでしょう。しかしながらブリグジットによりEUとの取引に税関申告が必要になったことから、取引が複雑化そして輸出入をする場合に以前よりも時間とお金がかかってしまう点は考慮しなければなりません。

そして最後になりますが、イギリスでは日本人の好感度が非常に高く、また契約や法律を遵守する国民性は日本人と共通している点が多いので、取引がしやすいでしょう。

イギリスへの移住を検討されている方、また外国子会社設立等をご検討されているご経営者様、疑問点がございましたら弊社提携先の司法書士・税理士がお手伝いいたしますので、お問い合わせ下さい。

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