タイは日本人の移住先として向いている? | 税金事情を交えながら徹底解説
Wat Arun temple at twilight in Bangkok, Thailand.

タイは移住先として向いているか。移住後のメリットとデメリット

人気のある目的地であるタイの移住のメリットとして、第一に生活費の安さが挙げられます。タイの物価は安く、例えば500mlの飲料水がコンビニで6バーツから販売されており、タイの業務用スーパーの「makro」では、日本米5kgが200バーツほどで販売されています。

さらに、タイの家賃相場はエアコンやキッチンの有無といった設備の充実度、または立地条件により異なるため一概には言えませんが、格安の賃貸も豊富にあり、月額3,000バーツ~20,000 バーツ(約 6000 円~40000万円)と幅広い選択肢があります。

また、医療大国で知られるタイは、最高の医療制度を備えた国として世界的に認められています。さらに日本人が多く来院する病院では、日本語通訳が可能な医師が常駐しているため、タイ語が話せない方でも安心して質の高い医療サービスを受けられます。一方で、不安定な政治情勢や大気汚染の深刻化、その他にも、バンコクでは交通渋滞が世界レベルで悪化しているため、上記のようにタイ移住に伴うデメリットも考慮する必要があります

移住のためのビザ発行のハードル

タイに移住するためには、タイの移民法によりビザを取得する必要があります。ビザの取得にはタイ国外のタイ大使館または領事館から適切なビザを申請する必要があり、外国人が取得する一般的なタイのビザの種類、取得の難易度や条件を簡潔に述べると以下のように分けられます。

1.観光ビザ(TRビザ)
観光目的のビザ。滞在可能日数は60日+延長代1900Bの支払いで30日、最大90日滞在可能。ビザ取得の難易度は低いが、滞在日数が短いことが欠点

2.就労ビザ(Bビザ)
就労目的のビザ。タイの企業に雇用または後援されている場合に取得可能。労働許可証(ワークパーミット)を合わせて取得しないと不法就労になり、違反した者は罰則される

3.学生ビザ(EDビザ)
留学目的のビザ。タイで学生ビザの取得が可能な学校に授業料(半年または 1 年コース)を支払い、学校側が用意したビザの取得に必要なレターを持参してタイ国外のタイ大使館でビザを取得する必要がある。

4.退職または結婚ビザ(Oビザ)
リタイアメントビザの申請条件は、50 歳以上の退職者で、滞在中に十分な資金(タイ銀行口座に80万バーツ以上の預金)の証拠を提示する。結婚ビザの申請条件は、配偶者がタイ国籍か正規就労している人であり、結婚証明書のコピーを提示する。

5.タイエリートビザ(PE)
特権入国ビザに分類される長期ビザ。入会費 60 万バーツ~200 万バーツと引き換えに、5年から最長20年の居住が可能。様々な会員プランがあり、会員には90日レポートの代行など特典が付帯されている。

6.ロングステイビザ(O-A)
長期滞在退職ビザ。申請者は50歳以上で、タイ国内の保険が病院での外来治療で40,000バーツ、入院治療で400,000バーツ以上を保証する健康保険の加入が必須。

7.ロングステイ10年ビザ(O-X)
申請者は50歳以上で、3,000,000バーツ以上の預金または1,800,000バーツ以上の預金と年間1,200,000バーツ以上の収入がある方が対象。

タイには50歳以上を対象としたビザが多くあり、タイのビザ延長手続きはタイの入国管理 局(イミグレーション)で行います。また、2以外のビザはタイでの就労が認められておらず、ビザ取得要件は頻繁に変更されるため注意が必要です。

タイと日本の税制度の違い

では、実際に移住するにあたって、移住後のタイと日本の税制度の違いを解説していきます。

タイの税制には住民税はなく、個人税は「所得税」のみとなります。少し話は逸れますが、 以前にはなかった日本の固定資産税に相当する土地建物税が、2020 年から新税法としてタイに導入されました。また、日本と異なりタイの個人所得税、付加価値税(日本の消費税)、法人税は比較的低く、タイの歳入局によって課せられる主な税金は、個人所得税(0~35%の累進課税)、付加価値税(7%)、および法人所得税(20%)です。

さらに、投資におけるタイ税制の最大メリットとして、日本ではキャピタル・ゲインの課税率が20%なのに対し、タイでは原則、キャピタル・ゲインは非課税となります。そのため、購入した株からキャピタル・ゲインを得ても日本のように税金として納める必要がありません。

二カ国の税率比較

国別 付加価値税(日本の消費税に相当) 所得税 仮想通貨税 キャピタルゲイン
タイ 7% 5%~最大35%の
累進課税
一律 15% 非課税
日本 10% 5%~45%
7段階の累進課税
最大55% 20%

上記の表で明らかなように、タイは日本と比較して低税率国であることが分かります。

居住者、非居住者の定義と課税範囲

タイの納税義務者は、大きく分けて「居住者」と「非居住者」の2つに分類されます。

1.居住者
税務上の「居住者」の定義は、タイ国籍または、タイに暦年(1/1〜12/31)で通算180日を超えて居住する外国人を指し、タイ国内源泉所得およびタイ国外源泉所得をタイ国内に持ち込んだ場合、居住者は課税されます。

2.非居住者
税務上の「非居住者」の定義は、タイに暦年で通算180日未満で居住する外国人を指し、居住者とは異なり非居住者はタイ国内源泉所得に対してのみ課税され、タイ国外源泉所得は非課税となります。繰り返しになりますが、タイ国内源泉所得は居住者および非居住者を問わず課税され、タイ国内源泉所得はタイ国内における事業、職務、資産から得た所得を指します。

付加価値税(VAT)

付加価値税は日本の消費税にあたり、生産および流通の各過程で付加価値に課せられる間接税でもあります。付加価値税は、タイで定期的に物品の販売やサービス、または輸入に対して適用され、納税義務者は、年間売上高が180万バーツを超える個人または事業者を指し、タイで購入した特定の商品に対して7%の税率で付加価値税を支払う必要があります。さらに、付加価値税の計算は、日本の帳簿方式でなくタックス・インボイス形式となります。

個人所得税(PIT)

個人所得税の解説の前に、タイで使用されている通貨はバーツ(Baht)、その略語はTHBです。また、2021年7月現在の1タイバーツは、約 3.37円に相当します。(相場は為替レートにより変動します)
では、課税所得に適用される個人所得税率は以下のとおりになります。

課税所得(バーツ) PIT率(%)
0-150,000 免除
150,001-300,000未満 5
300,001-500,000未満 10
500,001-750,000未満 15
750,001–1,00,000未満 20
1,000,001–2,000,000未満 25
2,000,001–5,000,000未満 30
5,000,001以上 35

上記の表のように、収入が15万バーツ未満の場合はタイでの税金の支払いは免除されますが、基本的に年間15万バーツを超えた場合、課税されます。また、日本と同様に所得や遺産の額に応じて段階的に税率が引き上げられる累進課税制度を採用しています。個人所得税(PIT)は、個人の所得に課される直接税です。タイの税金は暦年を中心に展開され、納税者は課税年度の翌年の3月の最終日までに個人所得税申告書を提出し、歳入当局に納税する必要があります。

相続税および贈与税

2016年2月に施行された相続税および贈与税は、個人と法人の両方に課税されます。また、タイ移民法に従ってタイの居住者とみなされる非タイ国民(タイ以外の国籍)にも課せられ、タイに所在する非タイの相続資産にも適用されます。

相続税の課税対象者と相続税率
相続税法に基づき、相続を受けた以下の者は納税義務を負います。
受け取った相続の価値が1億バーツを超える場合、1億バーツを超える超過額のみが課税されます。超過額の相続税率は、親または子孫の場合は5%、他の相続人には10%の相続税率が課税されます。

相続税の非課税対象者
次の場合は相続税の支払いが免除されます。
相続税法の施行日(2016年2月1日)より前に死亡した所有者から相続を受け取った場合、資産価値が1億バーツを超えない場合、または相続所有者の配偶者は非課税の対象となります。 相続税の対象となる相続資産は、登録車両、証券取引法に基づく有価証券、不動産です。相続税の課税対象者は、相続から150日以内に納税と相続税申告書「PM60」を歳入局に申告をする必要があり、申告を怠った相続人には、罰金と刑事罰の両方があります。

贈与税の対象と贈与税率
贈与税は個人所得税の一種であり、財産の譲渡に対する税金として定義されます。親、子孫、 配偶者などに贈与として譲渡された金銭やあらゆる種類の資産が課税対象となり、親または子孫の場合は5%、他の相続人には10%の贈与税率が課税されます。

贈与税の非課税対象
課税年度において、2,000万バーツを超えない額で直系尊属・直系卑属、配偶者から受け取った維持収入または贈答品と親から子への不動産の譲渡、もしくは、もしくはそれ以外から受け取る維持収入または贈答品が1,000万バーツを超えない場合は、非課税枠となります。

海外送金に対する源泉徴収

タイでは、国内または海外への送金時に源泉徴収制度が実施されており、配当金、タイでの株式譲渡による利益など、特定の課税所得を法人または海外居住者に対して支払う場合、源泉徴収の対象となり、10~15%の源泉徴収税率が適用されます。

仮想通貨税

2018 年5月に新しく施行された仮想通貨法により、居住者がタイの仮想通貨交換所で仮想通貨を最終的に売却(タイバーツに換金)し、その利益を所持する銀行口座に振り込んだ場合、タイの国内源泉所得として見なされ、一律 15%の税率と確定申告の義務が課せられます。つまり、仮想通貨をバーツに換金した利益を自身の銀行口座に振り込まなければ非課税となります。

また、タイ証券取引所(SEC)によって認可されているタイの暗号通貨は、1Bitcoin (BTC) 2Bitcoin Cash (BCH)3Ethereum (ETH) 4Ethereum Classic (ETC) 5Litecoin (LTC) 6Ripple (XRP) 7Stellar(XLM)の7つであり、信頼性が高く人気が高いです。

確定申告

タイと日本の共通点である確定申告は、毎年1月から3月の最終日までに個人(居住者)が 確定申告を行い、前年度の年末締めの税金、または個人所得税を歳入局に納税する必要があります。タイの課税年度は1月1日から12月31日で、確定申告の際はパスポートと住所証明書を持参し、タイ語で報告する必要があります

移住後の必要な手続き

滞在時の注意点として、ビザを取得または90日以上タイに滞在する居住者は、タイ入国管理局(イミグレーション)に「90日レポート」を提出しなければなりません
タイ入国管理局:https://www.immigration.go.th/

90日レポート(居住地申告)は、90日毎にご自身の現住所を報告するものであり、90日以上のビザを取得された方や、90日以上長期滞在する方が申告の対象となります。ただし、入国から90日以内に一度出国する場合、レポートの提出は不要となります。

原則として、90日以上滞在する居住者は、90日の期間が満了する前の15日以内、または7日以内にこの報告書を提出しなければなりません。タイでの居住地申告の義務を怠った場合、2,000バーツ(日本円で約 6000 円)の罰金が科せられますので、申告期限が過ぎてしまわないようパスポートを随時チェックすることをおすすめします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。先述のように新税制も導入されているため、タイへの移住を検討している、もしくは移住前に税制の不安に直面してアドバイスが必要な方は、最終的に弊社の提携先の司法書士・税理士に一度お問い合わせください

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