- ざっくばらんで明るい国民性
- 歴史や文化を肌で感じられる街並み
- 美味しい食事
などなど、数えるときりがないほどに魅力がいっぱいのイタリア。そんなイタリアに移住してみたいと考えている人も多いのではないでしょうか。しかし、外国に移住するのであれば、知っておかなくてはならないことがあります。
それは「税金」についてです。
住む国が変われば、払うべき税金やシステムも変わります。実際のところ、イタリアの税金は日本と比較すると「高く」設定されているのです。税金について知っておかないと、住み始めてから「こんなはずではなかった」と後悔してしまう危険性があります。
そこで、本稿では「税金」という観点から、イタリアでの生活についてまとめました。最後までお読みいただければ、イタリアの税制についての知識が深まり、実際に移住した際にも役立つはずです。
ぜひ、参考にしてみてください。
Contents
イタリアの消費税はどのくらい?
イタリアには、「付加価値税」と呼ばれる、日本における「消費税」にあたる税金が存在します。イタリア国内で買い物をする際には、必ず支払わなければならない税金です。
スーパーなどの小売店の商品価格は、すべて付加価値税が含まれた「内税」で表示されています。
2021年1月現在、イタリアの付加価値税の税率は「22%」。
日本の10%と比較すると、2倍以上も高く設定されており、世界的に見ても12番目に高い税率です。
付加価値税の税率は、イタリアを含むヨーロッパ諸国において特に高い傾向があります。その理由は、ECC(EUの前身)発足時の加入条件として「税率を引き上げる」ことが義務付けられていたからです。
とはいえ、食品や医療に関わる一部の生活必需品には、軽減税率が適用されている商品もあります。その税率は、商品により異なり「10%」または「4%」です。
軽減税率が適用される商品については、以下で詳しく解説していきます。
軽減税率10%の商品について
軽減税率10%の商品は、以下の通りです。
「建物の修復に関わる商品」が軽減税率の対象となっているのは、たくさんの世界遺産を保持するイタリアならでは。
いざという時に必要な「薬」も軽減税率の対象です。ありがたいポイントですね。観葉植物、映画が対象となっているのも華やかなイタリア人らしい部分が表れています。
軽減税率4%の商品について
軽減税率4%の商品は、以下の通りです。
医療に関わる器具、パスタ、野菜、紅茶、牛乳、マーガリン、バター、オリーブ油、チーズ、パン、新聞、本
医療器具だけでなく、パン、バター、オリーブオイルなど、細かい商品ごとに税率が定められていいます。
日本人がイメージする「イタリア人が好む食品」に軽減税率が適用されていますね。
イタリアの所得税はどのくらい?
イタリアの所得税は「累進課税方式」が採用されており、1ユーロ=125円で計算した場合、以下の金額になります。(国民健康保険料も含む)
27%:1万5,000ユーロ(約188万円)超~2万8,000ユーロ(約350万円)以下の所得
38%:2万8,000ユーロ(約350万円)超~5万5,000ユーロ(約688万円)以下の所得
41%:5万5,000ユーロ(約688万円)超~7万5,000ユーロ(約938万円)以下の所得
43%:7万5,000ユーロ(約938万円)超の所得上記の他に、市税、地方税の徴収も行われます。参照:「日本貿易振興機構(ジェトロ)」https://www.jetro.go.jp/world/europe/it/invest_04.html
イタリアの所得税は日本と比較して高い設定となっています。
イタリアで働いて給料をもらう際は、市税や地方税を含めると、総額の約30%が徴収されてしまうのです。
加えて、業種や勤めている会社の従業員の人数により変動しますが、給料の9.19%、または9.49%が年金として徴収されます。
上記をふまえると、イタリアでもらう給料の手取り額は総支給額の「約半分」になってしまうのです。
イタリアの法人税はどのくらい?
イタリアの法人税率は、2017年以降、金融機関は27.5%、それ以外の法人は24%となっています。
日本における法人税率は約30%です。
法人税は日本と比較すると安く設定されていますね。
安い法人税が影響し、イタリアでは比較的、個人事業主が多いです。
イタリアで個人として仕事をするためには、まず会計士に相談し、商業税番号(Partita IVA)を手に入れる必要があります。
取得する商業税番号によって、納めるべき税金の額が異なるため、会計士は以下の内容を加味して、依頼者に適合した商業者番号を選定するのです。
- 依頼者の仕事内容
- どのくらいの売り上げを生み出しているか
収入の半分以上の税金額が、イタリアの個人事業主の平均的な数値となっています。
イタリアの相続税はどのくらい?
イタリアでは、配偶者や一親等の親族が相続した際の税率は4%で、100万ユーロ(約1億3000万円)が控除されます。
最高税率が55%で、控除額が3000万円である日本と比較すると、相続税に関する負担はかなり低いですね。
イタリアでは同族経営の会社における相続がしやすいため、比較的簡単に積み上げてきた伝統やノウハウを受け継いでいくことができるのです。
イタリアならではの税制について
ここからは、イタリアに移住するのであれば、知っておくべき「イタリアならではの税制」について解説していきます。
日本にはない【ゴミ処理税】
イタリアでは、家の面積や住んでいる人数に応じて「ゴミ処理税」を支払わなければなりません。
自分が住む地域の地方自治体によって税額の算出方法は異なり、年間で100ユーロ~300ユーロほどを納めることになります。ゴミ処理税を滞納すると、罰金を支払わなければなりません。
イタリアに住み始めたら、必ず市役所で登録してください。
パスタにかかる税金は安い!
イタリア人の国民食である「パスタ」
上述のとおり、パスタには軽減税率4%が適応されています。
日本のレストランで美味しいパスタを食べようとすると、1200円~2000円ほどかかりますが、イタリアでは大盛りの美味しいパスタが7ユーロ(約900円)で食べられるのです。
イタリアの食に魅力を感じて移住をしたい人にとっては、嬉しいポイントではないでしょうか。
イタリアで生活するのであれば必須!【納税者番号】
イタリアでは、政府が国内のお金の流れを把握するため、一人一人に「納税者番号」が割り当てられます。
納税者番号は、イタリアで生活する上で、以下のような様々な場面で必要となるのです。
- 税金を支払う時
- 銀行口座を開設する時
- 定期券を買う時
- 携帯電話を買う時
- 家を買う時
- 車を買う時
納税者番号を取得するためには、以下の書類を用意し「Agenzia delle Entrate」という場所で申請する必要があります。
- パスポート
- ビザ
- イタリアでの住所を証明するもの
「Agenzia delle Entrate」の場所については、住んでいる地域を管轄する市役所で問い合わせれば教えてくれます。
イタリアで生活する上で、納税者番号は必ず必要となるので、移住したらできるだけ早急に取得してください。
イタリアは税率が高いゆえに失業率が高い
イタリアでは、「若者の失業率の高さ(約40%)」の問題が深刻化しています。
その理由の1つは、事業主が人を雇う際に支払わなければならない税金が高いから。
たとえレストランやバールなどの飲食店、郵便局、スーパーなどの小売店で人手が不足していたとしても、事業主側は、税金をできるだけ支払いたくないため、人を雇うことに慎重になります。
そのため、若者でも「仕事をしたくてもなかなか見つからない」という状況になってしまうのです。
加えて、税金の高さは、「違法な仕事の蔓延」というもう1つの問題を生み出しています。高い税金を支払いたくない事業主は、正式に契約をせず、違法に従業員を雇用するのです。
この「ラボラネーロ」と呼ばれる違法な雇用形態で働いた場合、労働者は仮に給料が支払われなくても、法的に訴えることができないため、泣き寝入りするしかなくなってしまいます。
イタリアの経済発展を妨げる深刻な問題です。
また、イタリアで業者に頼んで、何らかの修理をしてもらうと、支払い時に「ネーロにしますか?」と聞かれることがあります。
ネーロにする=業者側は請求書を発行しない=税金を支払わなくて済む=修理代が安くなる
このような「お互いにメリットがある」図式ができあがってしまうため、違法なやり取りは無くならないのです。
【すべての人に医療を届ける】イタリアの医療制度
イタリアの医療は「すべての人に医療を」というコンセプトで制度化されています。
医療には税金が多く使われており、基本的に無料で診察を受けることが可能です。所得税を納めていない貧困層、学生ビザなどで滞在している人でも年間150ユーロを支払えば国民健康保険に加入できます。
しかし、その仕組みは決して万全であるとは言えず、診察の予約をしても「6か月先にやっと受診できる」というケースも珍しくありません。まだまだ改善が必要な部分です。
病院で検査を受けたい場合は、事前に計画を立て、早めに予約をしておきましょう。
イタリアの税制は国民に寄り添ってくれている
イタリアの税制は、日本と比べると「国が国民に寄り添う」姿勢が見られます。
「生活必需品」であるパスタの税金が安い=国民が本当に必要なものを政府が理解しているということ。
(日本では、キャビアや金粉など、あまり需要がないものが軽減税率の対象になっています。)
まだまだ課題はあるものの、国民すべてに行きわたる医療制度を提供しようする姿勢も、日本が学ぶべき部分です。
イタリア人が自分の国を好きだったり、明るい国民性を持っていたりする理由が、イタリアの税制から垣間見えるのではないでしょうか。
イタリアへの移住を検討している人は、税制をふまえた「イタリアで生活をするメリット・デメリット」を理解し、納得した上で行動に移しましょう。
安全に海外移住をしたい方へ
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