海外移住を決めたらさまざまな手続きが必要です。なかには日本国内での引っ越しと同じものもあれば、海外移住ならではの手続きもあります。
日本国内での引っ越しの大きな違いは、日本に住所がなくなってしまうことです。現在お住まいの家にご両親やお子さまなどが引き続き住み続けるといったケース以外は、賃貸にしろ持ち家にしろ、海外移住にあわせて日本での住まいは処分されてしまう方がほとんどでしょう。その場合、住所がなくなってしまうことで郵便が受け取れなくなり、いろいろと不都合が発生しかねません。
ペーパーレス化が進んだとはいえ、金融機関を中心にまだまだ郵便を使った本人確認などが多いのも事実。もしものときに不利益が起こらないよう、日本で代わりに郵便を受け取ってくれる方に協力をお願いしておきましょう。
また手続きには即日でできるものから、ある程度時間を要するものまで多岐にわたります。出国したあとでは手続きができないものや煩雑になるものもありますので、効率よく手続きを進められるようこの記事を参考にしてください。
Contents
日本を出国するまでに済ませなければいけない手続き
海外移住のために日本を出国する日が近づいたらしておかなければいけない手続きを解説します。
海外転出届の提出
1年以上海外に滞在する場合は、役所に海外転出届を提出します。日本国内での引っ越しでも転出届を提出しますが、海外転出届の提出にはパスポートの持参が必要です。
滞在先の国名・都市名の記入が必須ですが、詳細な住所は必要ないため、滞在先が確定していなくても心配いりません。提出は出国の14日前から可能です。
海外転出届の提出をもって日本国内での非居住者となり、住民税や国民年金などの義務がなくなります。
郵便物の転送手続き
しかし、ペーパーレス化が進んだ現代でも銀行やクレジットカード会社からの大切なお知らせから、ダイレクトメールなどまで、郵送で届くものはまだ多いのが現状です。
そのため、万が一にも大切な郵便物が受け取れないことがないよう、郵便物の転送手続きをしておきましょう。
冒頭でも触れましたが、海外に移住するために日本での住まいを引き払う予定の方も少なくないでしょう。そのため、海外滞在中に日本で代わりに郵便物を受け取ってくれる方を決めておく必要があります。
家族や友人で信頼できる方に早めに依頼しておきましょう。
頼めそうな方がいらっしゃならない場合は、海外居住者向けに私書箱のサービスもありますので、利用を検討しても良いかもしれません。
なお、郵便局でできる転送手続きは郵便局のサービス(郵便・ゆうパックなど)にしか適用されません。他の宅配業者などには転送先の住所は知らされませんので、万が一出国後に現在のお住まい宛てに宅配便が送られても、どこにも転送されないため、荷物が受け取れなくなってしまいます。
そのような問題を避けるために、宅配業者でも転送手続きが可能な場合があります。ヤマト運輸や佐川急便など宅配業者ごとに転送手続きが必要なため手間はかかりますが、大切な荷物を受け取り損ねないため、事前に手続きをしておくと安心です。
保険や銀行・証券口座の住所変更・解約
保険や銀行・証券口座の住所変更も必要です。
とくに銀行や証券会社では、日本国内に住所を持たない方(非居住者)の口座保有を禁止しているところが多いです。そういった銀行では海外へ住所変更したいと伝えると口座を解約するよう言われてしまうでしょう。
海外移住するからといって、日本国内の銀行や証券会社の口座がすべてなくなってしまうのは不便です。出国後も不動産などから収入があったり、税金の支払いがあったり、また一時帰国の際にも日本円が必要です。
投資信託や株式・債券などを保有されている場合は、口座解約のために保有資産をすべて売却するか、非居住者でも口座を保有できる証券会社を探して移管するかの選択を迫られることになります。
数は多くないですが、海外への住所変更を受け入れてくれる銀行や証券会社もあります。しかし、そういった銀行も、すでに海外に住んでいる方がその銀行に新たに口座を開くことは禁止していることがほとんどです。
そのため、海外移住が決まったらお早めにお持ちの銀行や証券口座が非居住者の口座保有を認めているかどうかを調べておきましょう。もし口座を持ち続けることができないのであれば、出国までに非居住者でも口座が持てる金融機関に口座をつくり、資産を移しておかなければいけません。
銀行や証券口座エリアの開設には一般的にカードやログインパスワードの郵送などで最低でも2週間程度の時間がかかります。余裕を持って出国の一ヶ月以上前までには申込みを済ませておきましょう。
また、海外からでも残高確認や振込などができるよう、インターネットバンキングの申込みも忘れずにしておきたいものです。
保険の手続き
海外移住が決まったら、保険会社には渡航予定日や滞在先の住所などを知らせる海外滞在を提出します。保険の場合、保険料を支払い続けることができ、また日本国内で郵便物を受け取り可能であれば非居住者になったあとも引き続き加入できるケースが多いです。
しかし、日本国内に住所がない方が新しく保険に入ったり、内容を変更したりということはできないと考えた方が良いでしょう。また保障範囲などが変わることもあるので、確認が必要です。
クレジットカードの手続き
外貨を持っていなくても海外で支払いができるクレジットカードは海外移住でも便利なアイテムです。海外移住が近づいたら、クレジットカードの住所変更も忘れないようにしましょう。
カード会社によって、海外の住所を登録できるところ、日本国内で郵便が受け取れる住所に限定しているところと分かれています。カードの有効期限が近づいたら新しいカードは登録住所に送られますので、海外の滞在先が登録できるカード会社だと便利です。日本国内の住所しか登録できない場合は、一時帰国などで新しいカードを受け取るまでカード利用ができなくなりますので注意が必要です。
また、海外移住中に新たなカード申し込みができるカード会社もあります。
水道・電気・ガス・携帯電話・NHKなど各種サービスの解約
現在のお住まいを引き払う予定でしたら、水道や電気、ガスなど解約も忘れずに連絡しておきましょう。水道・電気はインターネットや電話などで完結しますが、ガスのみ立ち会いが必要です。
また携帯電話やNHK、各種サブスクリプションサービスなど、日本出国後に使う予定のないサービスも解約しておきましょう。ただ、もし解約の連絡を忘れてしまってもインターネットから解約申込みができるものならば、海外移住後でも手続きができます。
国民年金の手続き
海外移住をして日本国内に住所がなくなると、国民年金に入る義務はなくなります。しかし、任意加入はできますので希望される場合は出国前に忘れずに手続きをしておきましょう。
国民健康保険の手続き
日本国内に住所がない非居住者となると国民健康保険は利用できなくなり、保険証は返却しなければいけません。返却は郵送などで可能です。
税金の手続き
通常確定申告は翌年の2月から3月にかけて行われますが、海外移住する場合は年の途中でも確定申告ができます。
また、海外移住後も日本国内で不動産取得がある場合などは毎年確定申告が必要になります。一時帰国してご自身で確定申告することもできますが、面倒だという方は出国までに納税管理人を指定しておきましょう。
納税管理人は海外居住者に代わって納税に関する書類を受け取ったり、納税または還付の受領をしたりします。個人・法人ともに指定可能です。
運転免許証の更新
長期で海外に行くことが決まっている場合は、運転免許証の有効期限にかかわらず事前更新が可能です。航空券などで海外に行くことを証明する必要がありますので、詳細は最寄りの運転免許センターなどで確認してください。
国際運転免許証の取得
海外で車を運転する予定がある方は、国際運転免許証を出国前に取得していくと便利です。滞在先に到着したその日から使えますので、海外移住後、現地で免許証を切り替えるまでの期間に車の運転ができます。発行には有効期限内の運転免許証と必要書類を添えて、免許センターなどで申込みをします。有効期限は最大1年間です。
滞在国での手続き
海外移住をされる方のために、滞在先に到着したあとの手続きとして在留届の提出について解説します。
在留届の提出
外国に3ヶ月以上滞在予定のある人は、滞在国最寄りの日本大使館・領事館に在留届の提出が求められます。滞在先の住所が確定したタイミングで提出するようにしましょう。
在留届には住所や日本国内の緊急連絡先などを記載します。日本大使館・領事館が在留邦人の数を把握し、緊急事態が発生した際の情報配信や安否確認、必要に応じて日本に住む家族へ連絡するために使われます。そのため、在留届に記載した内容に変化があった場合はその都度連絡し、日本へ帰国する場合は帰国届を提出しなければいけません。
在留届の提出は義務ではありませんが、滞在国に住んでいる証明でもあることや、万が一の場合に備えるために提出しておく方が良いでしょう。また、日本大使館・領事館で各種証明書の発給を申請する際、在留届の提出が条件となることもあります。
提出や情報更新はインターネットや郵送でも可能です。
まとめ
この記事で解説したように、出国前にしておかなければいけない手続きは多岐にわたります。また海外転出届を出し、非居住者になったあとは手続きができなかったり煩雑になったりしますので、手続き忘れがないように注意しましょう。
また新しい銀行口座の開設などのように手続きに時間がかかるものもあります。出国直前に慌てることのないよう、この記事が効率よく海外移住の準備を進める参考になれば幸いです。
安全に海外移住をしたい方へ
税の分野は毎年のように税制改正があり、素人の付け焼刃では節税目的で海外移住したつもりが脱税になっていることも多く、「国際税務」という非常に高度な知識が要求されます。
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それは、「海外移住に強い専門家」に相談することです。
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