「節税をするために海外に移住を検討しているが、タックスヘイブンについてよくわかっていない。」「昔よりも厳しくなっていると聞いているけど、実際どうなの?」
こんなお悩みをお持ちではありませんか?
本記事ではタックスヘイブン対策税制とその基準についてわかりやすく説明します。
今後海外移住を検討されている方には必見の記事となっていますので、是非確認してみてください。
Contents
タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)って何?
まずは、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)についてわかりやすく解説をします。
タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)とは、ざっくりと言えば外国の子会社を利用した租税回避を抑制するために、一定の条件下にある海外の外国子会社の所得を日本の親会社の所得としてみなし、日本の法人税率で課税する制度のことをいいます。それではもう少し詳細について確認していきましょう。
そもそもタックスヘイブンって何?
タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)を知る前に、まずはタックスヘイブンについて確認しておきましょう。
タックスヘイブンとは、「租税回避地」と言われています。もう少しわかりやすくいうと、税金を回避する=税金を安く抑えることができる地域の総称です。タックスヘイブンでは日本の法人税・所得税の税率が極めて低いというメリットがあります。タックスヘイブンに明確な定義はありませんが、特徴は以下の通りです。
①法人税がかからない、あるいは大きく減税されている
②秘匿性が高い
タックスヘイブンには上記のような特徴があるため、マネーロンダリングなどの犯罪に使われてしまうというデメリットもあります。しかし、タックスヘイブン自体は合法であり、利用しても問題がないということは認識しておきましょう。
タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)とは?
タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)とは、上記のようなタックスヘイブンを利用した税回避のスキームに対する規制のことをいいます。本来は日本で課税されるべき税金を海外に逃して税の支払いから逃れる事業者に対して、本規制が適用されます。
図の通り、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)により、税負担割合が30%未満のタックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立しても、会社単位の合算課税(日本での法人税の適用)となってしまうため、税制のメリットが受けられないということになります。また、ペーパーカンパニーでなかったとしても、経済活動基準を満たさなければ、税負担割合が20%未満のタックスヘイブンで会社を設立したとしても、日本の居住者ないし日本法人の子会社である限りは日本の法人税が適用されてしまいます。
2018年の法改正以前は、ペーパーカンパニーの外国法人の税負担割合が20%未満の場合のみ外国子会社合算税制が適用されていましたが、2018年以降はタックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)が厳しくなり、30%未満の場合でも外国子会社合算税制が適用されるようになりました。図の通り、税率が20%~30%の国を利用する場合には、会社がペーパーカンパニーとみなされてしまうか否かで大きく税金が変わってくるため注意が必要です。
法人税率が20%~30%の国は以下の通りです。
法人税率が20~30%に位置する国 |
・タイ |
・ベトナム |
・ミクロネシア |
・マレーシア |
・中国 |
・インドネシア |
・オランダ |
・米国 |
タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)を回避するためには
それでは、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)を回避するにはどのようにすればいいのでしょうか。
令和元年のタックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の変更点を踏まえて確認していきましょう。
タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)における専門用語の確認
いきなりタックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の変更点を確認する前に、専門用語の説明を簡単にしておきます。
受動的所得とは
受動的所得とは、配当、利子、有価証券の貸付の対価、有価証券の譲渡損益、デリバティブ取引の損益、外国為替差損益、デリバティブに伴う損益、外国為替差損益、有形固定資産の貸付の対価、無形定子さんの使用料と譲渡損益からの所得のことを指します。
キャッシュボックスとは
キャッシュボックスとは、以下の2点を満たす会社のことを指します。
1総資産に占める、一定の受動的所得の金額の割合が30%超の会社
2総資産に占める、有価証券、貸付用の有形固定資産、貸付金、無形固定資産の帳簿価格が50%超の会社
なお、2019年のタックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の変更から、関係者からの保険収入が大半を占め、関係者からの保険リスクを多く抱き抱えている会社もキャッシュボックスとして取り扱います。
ペーパーカンパニーとは
ペーパーカンパニーとは、特定外国関係会社の一類型です。
具体的には以下5つの基準に当てはまらない会社のことを指します。
1主たる事業に必要な事務所などその他固定施設を保有している外国関係会社
2本店所在地において実態的な事業の管理、運営を行っている外国関係会社
3持株会社である外国関係会社
4不動産を保有し、管理支配会社の事業に要する不動産や、自ら使用する不動産を保有している外国関係会社
5資源開発プロジェクトに関わる外国関係会社
なお、上記の類型を満たしている場合であっても、国税庁からの書類の提出を求められている場合にその提出がなされていない場合は、その外国関係会社はペーパーカンパニーだと推測されますので注意が必要です。
適用基準とは
適用基準とは、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)における合算課税の対象外か対象かを決める基準のことをいいます。具体的な説明は後述しますが、対象となる外国関連会社がキャッシュボックス・ペーパーカンパニー・ブラックリストカンパニーではないか
経済活動基準とは?
経済活動基準とは、実質的なビジネスをその会社がしているのかを見分けるポイントです。
ペーパーカンパニーではなくても、下記を満たさなければ合算課税対象になる可能性があります。
①事業基準
主たる事業が株式の保有のみなど一定の事業に該当しないことが必要です。
具体的には、株式、債権などの保有、無形資産の保有、船舶、航空機のみの保有などになります。
②実体基準
主たる事業の実態が本店所在地にあることが必要です。
実態として、その外国に事務所などの固定資産を保有していることが条件になります。
③管理支配基準
その事業の管理支配を本店所在地にて行っていることが必要です。
具体的に、株主総会や取締役会が行われているかなど会社の運営が為されているかが基準になります。
④非関連者および所在地国基準
事業の取引を非関連者と行っており、事業を行っているのがその本店所在地と認められること。
具体的には卸売業、保険業、信託業、銀行業、水運業、金融商品取引業、航空運送業の事業を営んでいる場合、非関連会社への売上、仕入れのいずれかが50%超になっていることが条件になります。
タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の変更点
令和元年におけるタックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の最も大きな変更点はペーパーカンパニーの範囲からの除外対象ができたことです。
2018年にペーパーカンパニーの外国法人の税負担割合が30%未満の場合は日本国内の法人税率が適応されるようになってから、法人税率が20~30%に位置する国にペーパーカンパニーを設立することのメリットがなくなってしまいましたが、除外対象ができたことにより、これらの国でも税制のメリットが取れる可能性があります。
除外要件は以下の通りです。
・外国子会社の株式等を保有する外国関係会社
・特定子会社の株式等を保有する外国関係会社
・不動産会社である管理支配会社の事業に必要な不動産を有する外国関係会社
・管理支配会社が自ら使用する不動産を保有する外国関係会社
・資源開発等プロジェクトに関わる一定の外国関係会社
上記改正までは、ペーパーカンパニーの判定は情報収集をする必要はありませんでしたが、本改正後の制度ではペーパーカンパニーの判定が税制に大きく関わります。
また、この他にもタックスヘイブンで連結納付を利用している場合の整備、キャッシュ・ボックスに一定の外国関係会社が追加されたなど細かい改正がありました。
タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)の経済活動基準
自社の海外における外国関係子会社がペーパーカンパニーではない場合においても、経済活動関係基準を満たしていない場合には、会社単位での合算課税の対象となるので注意が必要です。フロー表の通り、全てを満たしていて初めて外国の法人税が適用となります。ただし、この場合においても受動的所得については合算課税となりますので、日本の法人税率が適用されることになります。
このため、基本的には日本に住みながら海外法人を持ち利益を海外に逃しても、日本の法人税率での課税を逃れることはできないと認識しておくのが良いでしょう。
おすすめの節税方法とは?
それでは、どうすれば節税ができるのでしょうか。
結論、適切なステップを踏んで海外移住をするのが最も安全な節税方法といえるでしょう。
どれだけタックスヘイブンに法人を建てたところで、現状ではペーパーカンパニーに対しても日本の法人税率が適用される可能性が高いと言えます。最も節税できる可能性が高いのは、適切なステップを踏んで海外移住をすることです。海外移住をして日本の非居住者になることにより得る税制のメリットは非常に大きいといえます。ただし、こちらの記事でも紹介しているように、非居住者になるためのステップは複雑なため、必ず何をすれば非居住者になれるのかは確認をしておくようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。本記事では、タックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)について解説しました。タックスヘイブンを取り巻く海外の法人への税制は変更点も多く、ややこしいのが実情です。何よりも確実なのは、着実なステップを踏んだ海外移住をすることです。しかし、海外移住の際は注意しなければならない点も多く、複雑な手続きも多いのが実情です。お困りの際は、専門家に相談をしてみてくださいね。
安全に海外移住をしたい方へ
税の分野は毎年のように税制改正があり、素人の付け焼刃では節税目的で海外移住したつもりが脱税になっていることも多く、「国際税務」という非常に高度な知識が要求されます。
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