子供が世界一幸福な国「オランダ」は2018年から3年連続、子供の幸福度ランキング一位を獲得しました。EU加盟国27ヶ国の中でも極めて住みやすく治安も良いと評判です。またオランダの公用語はオランダ語ですが英語が出来れば全くストレス無く生活する事ができます。一方で税金や生活費が高い事でも有名です。
本記事ではオランダに移住した際にかかる生活費や税金について詳しく解説します。オランダ移住をご検討されている方はもちろん、移住後もお役に立てる情報をご紹介させていただきます。
Contents
オランダの消費税=BTW
消費税率と対象商品
オランダの消費税は付加価値税と言いレシートにはBTWと表記されています。税率は二種類あり全て内税表記されているので購入時に困る事はありません。
付加価値税(BTW)9%
食料品・薬・骨董品・美術品・美容院・自転車修理・靴や洋服の修 繕・書籍などの生活必需品
付加価値税(BTW)21%
外食・化粧品・衣類・靴・自転車・家具・家電など
日本の消費税法との違い
日本で平成31年(2019年)から導入された消費税の軽減税率はオランダでは1969年から導入されています。日本のいわゆる贅沢品に対する税率が10%に対してオランダでは21%と二倍以上になります。一方で生活必需品に関しては9%で日本の8%と大きな違いはありません。
消費税の還付(タックスリターン)
消費税を還付してもらう条件
オランダでの住民登録がお済みでない方は出国時に消費税を返してもらえます。還付される条件は以下のとおりです。
・EU加盟国内の非居住者であること。
・商品が未開封であり50ユーロ以上の商品であること。
・購入後三か月以内に出国すること。
消費税を還付してもらう方法
➀タックスフリーの提携店で購入の際、免税フォームをもらう。
➁免税フォームに記入し領収書を添付する。
➂スキポール空港の免税カウンターへ提出する。
注:還付を受けるには税関で未使用の購入品を提示できる必要があります。
事業主の消費税の申告
・オランダで事業をされている方は年に4回3か月ごとに消費税の申告をする必要があります。売上に含まれる消費税を納税する点は日本と同じです。大きな違いは事業経費として支払った消費税を差し引ける点です。売り上げが発生しなかった場合でも経費が発生してれば経費で支払った消費税が還付されます。
・消費税申告スケジュール
1月~3月分を4月末までに申告
4月~6月分を7月末までに申告
7月~9月分を10月末までに申告
10月~12月分を1月末までに申告
申告は全てオンラインで行い紙の申告書を提出する事はありません。
詳しくは弊社、提携先の司法書士・税理士にお問い合わせください。
オランダ税務署「Belastingdienst」で検索すれば税務署のウェブサイトをご覧になれます。
オランダ商工会議所「KVK」https://www.kvk.nl/のウェブサイトではオランダの税務について詳しい情報をご覧になれます。
オランダの所得税
所得税を申告する人
オランダ国内外で一定以上の所得または課税資産がある方。
所得税を申告する時期
・雇用されている方:給与から自動的に天引きされます。
・事業主:会計年度1月1日~12月31日、確定申告提出期限は翌年5月1日。
所得税を申告する方法
日本との大きな違いは消費税申告と同じく紙の申告書がない点です。全てインターネットのウェブサイト上で申告手続きを行います。日本との共通点は売上から経費を引き各種控除を引いた金額が所得となる点です。ほとんどの事業主は会計士にお願いして申告手続きをします。手数料は月50ユーロから200ユーロと様々です。
オランダの税務当局のウェブサイトbelastingaangifte.nlからDigiDという個人の社会保障番号と紐づいているパスワードを利用してログインします。納税申告書をオランダ語でBalastingaangifteと言います。
オランダの所得税率
オランダ通貨ユーロ | 1ユーロ=130円(2021.7時点) | オランダの税率 | 日本の税率 |
€19,982まで | 260万円程度 | 36.55% | 5%~15% |
€19,983~€67,072 | 260万円~875万円程度 | 40.8% | 20%~23% |
€67,073~ | 875万円以上 | 52% | 33%~40% |
上記の表のとおりオランダの所得税率は日本と比べるとかなり高いです。
確定申告時に各種控除もありますが日本の控除と比べると多くはありません。
オランダ語で確定申告控除を「Betaal minder belasting via aftrekposten」と言います。
オランダのその他の税金
・年に一度ゴミ税と下水処理税を一括で支払います。3人家族で年に10万円程です。
・オランダの国民健康保険料は日本と同じく国民皆保険です。日本との違いは未加入の場合罰金を徴収する点です。そういう意味では国民保険料を税金と捉える方が妥当だと思います。
罰則は厳しいですがそれを補って余りある手厚い福祉が準備されています。17才以下の医療費と学校は無料、毎月児童手当が105ユーロ支給されます。高額医療費にも上限額(およそ6万円)が設けられているので法外な医療費を請求されることはありません。国民健康保険料は所得に応じて減額されるので低所得者は実質20ユーロ(2600円)程ですむ場合もあります。更に国民健康保険料には年金も含まれているので67歳以上の方は年金を受給する事ができます。オランダの年金運用の持続可能性は世界でも最高水準です。
オランダに移住する時のビザの種類
オランダの入国管理局をIND(ウェブサイト:http://ind.nl)と言います。オランダに移住したい場合は入国管理局で居住許可(ビザ)の申請をします。ビザの種類によってオランダで働く事が出来る職種が異なります。本記事では代表的なビザ3種類をご紹介させていただきます。
ワーキングホリデービザ
年間200名に発給されています。条件は以下のとおりです。
・日本国籍を有し有効なパスポートを持っている者
・居住申請書の提出時に18歳~31歳である者
・扶養されている子供を伴わない者
・以前にオランダでの居住許可を持っていない者
・往復の航空券を持っているか購入できる十分な財産の証明ができる者
・オランダでの居住期間中、経済的な問題がない者
・有効な医療保険付きの健康保険に加入している者
特定活動ビザ
企業に雇用され従業員としてオランダで働く際に申請するビザです。知的労働者と普通労働者の2種類に分けられ条件がそれぞれ異なります。
知的労働者とは?
・対象者は受入企業がオランダの入国管理局(IND)に登録されている承認スポンサーであり月額給与が30歳以上の場合4,752ユーロ以上(約62万円以上)30歳未満は3,484ユーロ以上(約45万円以上)
・ビザの有効期間は最長5年(更新可能)
普通労働者とは?
・知的労働者以外で和食レストランのシェフや現地企業に就職が決まった場合申請できるビザです。
・ビザの有効期限は通常1年
自営業ビザ(会社設立、個人事業主、フリーランスなど)
1912年に日本とオランダでは「日蘭友好通商協定」という協定が結ばれました。なんと100年以上たった今日でも、この協定のおかげで日本人は厳しい条件なくオランダで起業し居住する事ができます。
自営業ビザを取得できる業種
アーティスト・ドライバー・英会話、茶道、ヨガなどの各種講師・インテリアデザイナー・調理師・プログラマー・マッサージ師・ネイリストなど思いつくあらゆる仕事が収益化できれば個人事業主としてKVK(オランダ商工会議所)に登録する事ができます。
自営業ビザ申請費用(2021.7時点)
・1416ユーロ(約184000円)
自営業ビザ取得条件
・18歳以上であること。
・過去に犯罪歴がないこと。
・資本金4500ユーロ(約58,500円)をオランダの銀行口座に有している事。
・アメリカ又は日本国籍者であること。
オランダでの毎月の生活費と住居
生活費
ユトレヒト市に住む3人家族のひと月の生活費
オランダ通貨€=ユーロ | 1ユーロ=130円の場合 | |
家賃(4LDK) | €1,150 | 149,500円 |
食費 | €600 | 78,000円 |
衣類・消耗品費 | €300 | 39,000円 |
電気・ガス代 | €120 | 15,600円 |
携帯電話代 | €50 | 6,500円 |
水道代 | €25 | 3,250円 |
インターネット代 | €25 | 3,250円 |
習い事代 | €40 | 5,200円 |
火災保険 | €20 | 2,600円 |
健康保険料(二人分) | €230 | 29,900円 |
合計 | €2,560 | 332,800円 |
オランダは物価が高いと言われていますが日本と比べると安いようです。オランダが安いのでは無く日本が高いだけなのかもしれませんが。日本より突出して高いのは外食費とガソリン代、交通費の3点です。衣類や食品に関しては日本の価格の8割ほどで購入する事ができます。
携帯電話やWi-Fiに関しましては2021年から日本でも値下がりしているので大きな差はありません。17歳以下の教育費、医療費、美術館、博物館の入場料が無料なので子育て世代の方には大きな違いになるのではないでしょうか?また大学生までは交通費が無料になったり両親が低所得の場合パソコンや自転車が無料で支給されたりします。
家賃と家探しの仕組み
オランダの不動産市場は2021年時点で不動産バブル状態です。常に住宅が不足しているので家賃もかなり高いです。その上1人当たりの居住面積に決まりがあります。例えば60平米のアパートに家族4人で住もうとしても狭すぎるという理由で賃貸契約ができません。仮に嘘をついて入居した場合、住民登録が出来ないのでオランダでの社会保障番号(BSN)の取得や銀行口座の開設、国民健康保険の加入、ビザの申請などができなくなります。
オランダの主要都市の家賃相場は4LDKで€2,500以上(30万円以上)になりますが、10キロ程離れた郊外は€1,100~(14万円位)と意外と手頃です。他ヨーロッパ諸国と比べてもバスや電車、路面電車がとても綺麗で便利なので郊外に住んでも特に不便はありません。
賃貸契約時には敷金で1ヶ月~3ヶ月分を支払いますが、退去時に問題がなければ返金されます。礼金は100ユーロ程です。
物件を探す時の日本との大きな違いは保証人をたてる習慣は無く自己紹介文を書いて家族について又は仕事について写真付きで紹介する点です。多くの候補者から選んで貰うためにも家主に好印象を持ってもらうよう工夫が必要です。現地にオランダ人の知人がいる場合、推薦状を書いてもらうのも効果的です。
不動産仲介業者を含めほとんどのオランダ人と英語で意思の疎通はできますがオランダ語がしゃべれる方が優先順位は高くなります。
不動産購入
オランダの住宅は外国人でも購入ができます。個人でも企業でも土地と建物の売買が可能です。社会制度が整っていて治安も良く、国民のほとんどが英語を話せるのでいろいろな国からの移住者が増えています。移住物件としても投資物件としても注目度が高く購入価格も上昇しています。相場は戸建住宅で€23万(3000万円位)から上は天井知らずの状態です。
また住宅購入後に家の外観をリフォームする時の規制が厳しく設けられています。古いレンガ造りの外観はそのまま維持する必要があります。
オランダ全土に運河が張り巡らされていて運河にはボートハウスと呼ばれる船の上に家を建てた住宅を見る事ができます。オランダ名物として人気が過熱し運河にボートハウスがひしめき合う状態になった程です。そこでオランダ政府は2019年頃に新規販売を禁止しました。今は現在の持ち主が売りに出さない限りボートハウスを手に入れる事はできません。
オランダに移住するメリット・デメリット
これから海外移住を検討されている方にはオランダは一番おすすめできる国です。国土は日本の九州地方位の人口1700万人の小さな国ですが移民に寛容な国民性のせいか人々はとても親切です。英語が通じますが日本語は通じません。が、日本食レストランは人気があり、たくさんあります。アジアンスーパーマーケットに行けばお米・味噌・しょうゆ・冷凍餃子や納豆・豆腐といった日本の食材も手に入ります。
オランダに移住するメリット
・17歳以下の教育費、医療費、美術館、博物館の入場料が無料。
・ビザ取得は比較的簡単。
・自転車道路が整備されていて素晴らしい。
・治安が良い。
・英語が喋れれば不自由しない。
・医療水準が高い。
・国民健康保険料と年金は日本よりも安い。
・不動産を購入した場合、値段が下がらないので投資目的としても居住目的としても損をしない。
・デジタル化が進んでいるので役所、病院、銀行などでの待ち時間がほとんどない。
・オランダの居住許可を持っていればEU加盟国内を自由に往来できる。
・オランダに住民登録した時から5年間居住したのちにはオランダ又はEUの永住権を申請できる。(オランダ語試験有)
デメリット
・英語が通じるとは言えオランダ語がわからないと不便。看板や商品パッケージが全てオランダ語で書いてあるため。
・マリファナが合法なので街中でよく吸っている人達を見る。
・10代の若者から老若男女問わず飲酒・喫煙率が高い。
・日本から直行便でも12時間かかり遠い。時差は7時間。
・山がない。
安全に海外移住をしたい方へ
税の分野は毎年のように税制改正があり、素人の付け焼刃では節税目的で海外移住したつもりが脱税になっていることも多く、「国際税務」という非常に高度な知識が要求されます。
もしあなたがもっとも安全かつ効率的に海外移住をしようと考えているとしたら、行うことはただひとつ。
それは、「海外移住に強い専門家」に相談することです。
弊社では、監査法人や外資系コンサルティング、元国税庁出身など豊富なキャリアを持つメンバーが海外展開を全力で応援します。
なお、当社は海外移住などの国際税務に特化したアドバイザリー集団ですので、顧問税理士の方が別にいらっしゃっても構いません。
セカンドオピニオン(専門的意見)としてアドバイスさせて頂きます。是非、お気軽にお問い合わせください。