ベルギーの風景

ビールやチョコレート、最近ではサッカー強豪国としても有名なベルギーは、オランダやドイツ、フランスに囲まれたヨーロッパの小国です。しかしその首都のブリュッセルEUの本部がある国際都市でもあり、日本企業も多く進出しています。

ベルギーは日本人にとって住みやすいのかどうか、税金の面から解説します。

ベルギーとはどんな国か

ベルギーの正式名称はベルギー王国と言い、面積は約30,000km²、人口は約1,100万人です。九州(約36,000km²)より一回り小さいほどの面積に東京23区(約980万人)よりやや多くの人々が住んでいると想像してください。

公用語はフランス語・オランダ語(フラマン語)・ドイツ語の3つです。フラマン語とはオランダ語の一種で、方言のようなものです。国内の地域によって、3つの公用語のうち、よく使われる言語が異なるのがベルギーの特徴です。

日本人が多く住んでいる首都のブリュッセルはフランス語をメインとしつつ、多くの場所で英語が通じます。「フランダースの犬」で有名なアントワープや、中世の街並みが残り、観光地として人気のブリュージュは北部のフランデレン地域に位置し、オランダ語(フラマン語)を主要言語としています。

そしてフランスと国境を接している、ベルギーの南部はワロン地域と呼ばれ、フランス語を話す人が多いです。また、ドイツ語はドイツ国境と近い一部の地域で使われています。

政治の面では連邦制を取っており、ブリュッセル首都圏地域、フランデレン地域、ワロン地域の3つの地域と、フランス語、オランダ語(フラマン語)、ドイツ語の言語ごとに組織された3つの共同体の全部で6つの組織が絡み合って構成されています。そのため、税金の種類によっては住んでいる地域によって税率が異なることがあります。

ベルギーの主要な税制度

ここではベルギーへ移住を考えている方のために、ベルギー居住者の税金について紹介します。

ベルギー居住者とは一年のうち最低6ヶ月(183日)以上をベルギーで過ごし、コミューンと呼ばれる役所(日本で言う市役所や区役所のようなところ)に住民として登録している人のことを指します。

ベルギーでは住民登録をし、IDカードを受け取らないと住居の契約や銀行口座の開設などで何かと不便です。また、観光ビザでは半年のうち最大90日しか滞在できませんので、日本から移住する場合は基本的に住民登録をした居住者として扱われることになるでしょう。

所得税

ベルギーの所得税の最高レートは50%で、ヨーロッパの平均(45%)より高くなっています。しかも、最高税率の50%が課される所得は約41,000ユーロ以上(=約530万円;1ユーロ=130円の場合)ですので、ベルギーはヨーロッパの中では比較的税率が高めの国と言えます。

それではさっそく、ベルギーの所得税の所得による税率の違いを確認してみましょう。なお、連邦制を取るベルギーですが、所得税は国によって徴収される税金であるため、ベルギー国内ならどこに住所があっても同じ税率が適用されます。

ベルギーでの課税所得は全世界での収入から社会保障費や控除などを除いて計算されます。年金などの社会保障費の平均は、会社員で年収の13%程度、自営業者は22%程度と言われています。

課税所得 日本円(1ユーロ=130円で換算) 税率 参考:日本の所得税率
0 - €13,440 0 - 約175万円 25% 5%
€13,441–€23,720 約175万円 - 約308万円 40% 5〜10%
€23,721–€41,060 約308万円 - 約534万円 45% 10%〜20%
€41,061+ 約534万円以上 50% 20%〜45%

それぞれの税率は、表にある所得に応じて段階的に適用されるのです。例えば課税所得が€45,000の場合、計算式は以下のようになります。一見すると、日本と比較して税率が高いので驚きますが、実は税額の計算方法が日本とは異なります。

€13,440×25%+(23,720-13,440)×40%+(41,060-23,720)×45%+(45,000-41,060)×50%

また、ベルギーにも日本でいう基礎控除にあたるものがあります。その金額は2021年の場合、1人あたり€8,890(=約116万円;1ユーロ=130円の場合)で、日本の基礎控除額48万円と比べると2倍以上です。また、子供がいると以下のように控除額が増えていきます。

子供の数 加算される控除額
1人 €1,630
2人 €4,210
3人 €9,430
4人 €15,030
以降、子供が1人増えるごとに追加される控除額 €5,820
子供が3歳以下の場合 1人あたり€610追加

付加価値税(TVA/BTW)

以上より、ベルギーの最高税率はヨーロッパの中でも高めですが、計算方法の違いにより見た目ほど税負担は大きくなく、また子どもの数に応じた控除などもあるので、特にファミリーで移住した場合は所得税に関してそこまでの負担感はないでしょう。

フランス語でTVA、オランダ語ではBTWと呼ばれる付加価値税は、日本で言う消費税とよく似た仕組みです。

標準税率は21%と、日本の消費税と比較すると高いですが、食料品や本などの生活必需品などは軽減税率が適用されます。なお、ほとんどの場合、店頭では税込み価格で表示されますので、税率を気にする機会はあまりありません。

毎年1月1日時点でベルギーに不動産を持っている人は不動産税を払わなければいけません。税額は1年間、その不動産を賃貸に出した場合に得られると想定される金額に対して課されます。

不動産関係の税金

標準税率 21%
レストランでの飲食など 12%
食料品、飲料(酒以外)、本、薬などの生活必需品 6%

連邦制を取っているベルギーでは、不動産税の税率は不動産が位置する地域によって異なります。2021年時点では、ブリュッセル首都圏地域2.25%、フランデレン地域2.5%、ワロン地域1.25%です。

また、不動産購入時には築2年以内の建物では21%の付加価値税(TVA/BTW)、築2年以上の建物では6−10%の登録税(不動産価格から一定程度の控除あり)が課せられます。不動産登録税については、不動産がある地域によって税率や控除の額が変わります。

確定申告について

ベルギーには日本のように年末調整の制度はありませんので、毎年1月から12月に得た収入について、会社員であっても翌年の夏までに確定申告が必要です。

確定申告は郵送またはオンラインでの手続きが可能で、期限は手続き方法によって異なるので注意が必要です。例年、郵送よりもオンラインの方が申告期限は遅く設定されています。

申告は自分ですることも、50ユーロ〜200ユーロほどの手数料を払って税理士(会計士)に依頼することも可能です。期限までに申告を行うと、還付が受けられる場合はその年の年末〜年明け頃までに登録した口座に振り込まれます。申告を忘れた場合は罰金と10〜20%ほどの加算税が課されることがあります。

日本人がベルギーで生活するメリット・デメリット

パスポート

日本人がベルギーで生活するメリットの一つが充実した社会保障です。ここでは簡単に社会保障の制度を解説し、さらにベルギーに住むメリット・デメリットを紹介します。

充実した社会保障

ヨーロッパの他の国々と同様に、ベルギーも社会保障は充実しています。まず、外国人のビザ取得で必ず加入を求められる健康保険について解説しましょう。

健康保険を提供する会社はいくつかあり、各自が好きなものを選ぶことができます。プランにもよりますが、全体的に日本よりも安価です。
加入者には医療費(一部)や産休・育休手当、傷病手当金などが支払われますが、一般的なプランでは入院費が対象外であることに注意が必要です。ベルギーでは外来での診療に比べて入院費は非常に高額となることが多いため、通常は勤務先が提供している入院保険に入るか、ない場合は自分で加入することが多いです。

また、子育て世代への支援も充実しています。
たとえば子どもの数に応じて毎月支給される手当は、子どもが25歳になるまでが対象です。2021年時点では、おおむね子ども一人あたり毎月150ユーロです。また、確定申告では保育園の利用料などが控除の対象として認められています。

さらに外国人であっても、過去6ヶ月以上ベルギーで働いていれば失業手当が受け取れるなど、ベルギーは社会保障が充実していると言えます。

メリット

充実した社会保障以外の、日本人がベルギーで生活するメリットを紹介します。

  • ・日本企業が多く進出しており、ベルギー全体で5,000人程度の日本人が居住しているため、日本食材店や日本人学校があり、日本語が通じる医師もいる
  • ・ブリュッセルには成田から直行便もある
  • ・EU本部があり、外国人が多くて国際的な雰囲気で英語が通じやすい。英語が公用語の会社も多い。
  • ・ヨーロッパの交通の要衝であり、鉄道や航空網、高速道路を使って旅行が楽しめる

デメリット

ベルギーで生活しはじめた日本人が最初は苦労するかもしれない点を3つ紹介します。

  • ・ベルギー内でも地域によって主要な言語、政府が違うのでルールが異なることがあり、慣れるまで面倒に感じる
  • ・英語が通じることが多いが、日用品のパッケージから公的な書類などはフランス語またはオランダ語の表記しかないことが多いため、これらの言語が少しはできた方が良い
  • ・基本的に東京と比べると涼しい気候だが、ここ数年、夏の間のせいぜい数日から2週間程度だが気温が30℃を超えることも珍しくなくなった。しかし、古い建物が多いく、たいていの家にはエアコンがないため、賃貸で暑さが気になる場合は床置きタイプのエアコンが必要。

まとめ

日本からの移住先としてのベルギーを税金の面から検討してみました。ベルギーの所得税や付加価値税の税率は日本よりも高いため、残念ながら税金という面で特別有利とは言えません。

しかし、ベルギーは在住日本人が比較的多いことからわかるように、日本人にとっては暮らしやすい国です。特に子育て世代への保障は充実していますので、お子様と一緒に海外移住を検討されているなら移住先候補として考えたい国の一つです。

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