ロシアはあまり移住地として印象は強くないかもしれません。そこでロシアが移住先として向いているのか、税金に注目してロシアの移住状況を説明していきます。
ロシアに12か月の間に183日滞在していると居住者としてみなされ、ロシア人にかかる税率と基本的に変わらないと考えてください。
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ロシアの税金の種類とは
ロシアで暮らそうと思ったら、以下のような税金が対象になります。生活環境によってはこの他の税金がかかることもありますが、一般的なロシアの税金は以下のようになります。
● 付加価値税
● 個人所得税
● 私有財産税
● 土地税
付加価値税
ロシアの付加価値税はVATともよばれ、商品やサービスが販売される時に必要な税金となります。商品やサービスを提供している店舗に請求され、店舗は顧客から徴収する形となります。免税になる商品やサービスはなく、全ての商品やサービスに付加価値税がかかります。
付加価値税は2019年に18%から20%に引き上げになりました。しかし食品や子供用品、その他にも医療機器に関連するサービスに関しては10%、医療サービスや教育サービスなどに関する付加価値税は免除となっています。
個人所得税
ロシアの個人所得税は2020年までは一律で13%だったのですが、2021年1月1日から年収500万ルーブル(約700万円)を超えると、超えた金額に関しては15%の税率のなります。
ロシアは20年間一律だったのですが、21年ぶりに累進鋭が導入されることになりました。
この累進税はあくまで所得に対してであり、保険金や年金受給に対しては500万ルーブルをこえても一律で13%の税率となります。
私有財産税
次に私有財産税ですが、対象物の価値によって税率が異なります。
対象物の価値 | 私有財産税 |
30万ルーブル(48万円) | 0.1% |
30万ルーブル(48万円)~50万ルーブル(80万円) | 0.1~0.3% |
50万ルーブル(80万円) | 0.3%~2% |
ロシアでは電子化が進んでおり、納税者は連邦税務庁のWEBページにて支払うべき税金の確認が可能になります。
土地税
ロシアはそれぞれの土地の地籍に対しての価値によって土地税が決まっています。
一般的には1.5%なのですが、農地や住宅地、公共施設のインフラ用地として使う場合は0.3%となります。
ロシアの税金の特徴とは
ロシアは日本とはまた違った税金の特徴があります。主な特徴としてあげられるのは以下の3点です。
● 全てが国税である
● 賦課課税制度
● 個人負担が大きい
全てが国税である
ロシアは地方税や市民税がなく、全てが国税です。そのため地方によって税金が違うということはありません。
賦課課税制度
納税者が申告書を提出し、税務当局が査定をして税額を決定します。査定の上で税務調査が必要な場合もあり、その場合は税額が決まるまで時間がかかります。
日本は自主申告方式であることから、日本とは大きく違います。両国ともに納税者が申告書を提出するまでは同じなのですが、最終税額が決定されるまでの課程が違います。そのため日本のようにあとから申告漏れということは基本的にありません。
個人負担が大きい
ロシアは個人の税金でまかなっている部分が大きく、個人負担が大きいのが特徴です。2015年から2017年の間に給与の増加が15%だったのに対して、土地や不動産などに対する税金は28%増加しています。
さらに土地や車などに対する税の総額も増えているのです。
主な税金の日本との比較
消費税や所得税、さらに確定申告の方法など日本との違いを説明していきます。
消費税の違い
日本の消費税は10%で、ロシアの消費税にあたる不可価値税は20%です。これだけを単純に比べるとロシアの消費税が高く感じるかもしれないのですが、ロシアは教育関連、医療関連、銀行関連にかかる費用は税金がかかりません。
このように生活必需品に対しての付加価値税がかからないことから、日本とは認識の差があります。
所得税の違い
日本は収入によって所得税率はあがっていきますが、ロシアは500万ルーブル(日本円で700万円)を境に13%の所得税が15%になります。日本とロシアの所得税を比較すると以下のようになります。
以下の表を比較すると、収入が3,299,000円までは日本の方が税率が低いですが、3,300,000円を超えると日本は一気に税率が高くなります。対してロシアは7,000,000円(為替により変動あり)を超えても15%と微増するだけで、ロシアの方が税率は低くなります。
課税される所得金額 | 日本税率 | ロシア税率 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 13% |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 13% |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 13% |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 15% (為替にもよりますが、700万円~) |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 15% |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 15% |
40,000,000円 以上 | 45% | 15% |
また日本にあるような基本通達、個別通達、施行令、租税特別措置法のような規定はなく日本よりも税のシステムはシンプルです。さらに1993年から税務当局が「Interpretation and Practice」を公表していることから、明確な税制の仕組みとなっています。
確定申告の違い
日本もロシアも個人所得税に関しては、1月1日~12月31日が対象となり翌年に申告をします。
日本が2月中旬~3月中旬であるのに対してロシアは翌年の2月末ころまで居住者用のForm B1が送付されてきて、4月15日までに税務署に申告をします。
申告方法は用紙に記入するタイプと電子申告(e-filingとよばれます)の2種類ある点も日本と同じです。
一点大きく違うのは日本は自分で計算をするのですが、申請をあげてから税金が決定され通知がきます。この通知(賦課決定通知)が届いてから、1ヶ月以内に決定した税金の金額を納付することになります。
一括だけではなく、銀行口座自動引き落とし(GIRO)を利用すると最大で12回まで分割払いをすることができます。そのため負担はロシアの方が少ないケースが多いです。
ロシアは国外で税金を納付している場合、所得に二重課税を調整するための外国税額控除があります。
まとめ
ロシアは国民負担の大きな国で、日本の消費税にあたる付加価値税は日本の20%と高額です。しかし国民が納得いっているのは、教育費用、医療費用、銀行に関する費用など生活必需品に対して付加価値税がかからないことが大きいでしょう。
そのため付加価値税だけを見ると税金が高い国だと思いがちですが、生活をしてみると思った以上に税金の負担は大きくないといった声が聞かれます。
ロシアは全て国税であることも特徴的です。そのため地方によって税金が変わるということはありません。
最後の納付するべき税金の額の決定方法が日本とは大きく違います。日本は自己申告制であるのに対して、ロシアは確定申告で申告してから税務額が税務庁から通知されるシステムです。
通知されてから1ヵ月で納付する必要があるのですが、一括でなくても分割で支払うことも可能です。最大で12ヶ月まで分割可能なので、大きな負担にはならないでしょう。
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