出国前に必ず行っておくべき手続きを徹底解説【非居住者になるためのステップ】

税制メリットを受けるために海外移住を考えたはいいものの、出国前の手続きが煩雑でお困りだったりはしませんか?

本記事では、出国前に準備すべきこと、出国時に踏むべき手続き、そして出国後に何をすべきなのかを3Stepに分けてわかりやすく説明します。海外移住を目指す方には必見の手続きになりますので、ぜひ確認してみてください。

そもそも非居住者とは?

そもそも非居住者とはなんなのでしょうか。

非居住者とは居住者以外の個人を指します。もう少しわかりやすく説明すると、国内に住所がなく、現在まで引き続いて1年以上日本で居住をしていない個人のことを非居住者といいます。
日本では居住者でない人を非居住者と表現しているため、居住者の要件に一つでも当てはまってしまうと、居住者と認定される可能性があるため、注意が必要です。

非居住者の取り扱いについてはこちらの記事で説明していますので、まだ理解ができていないという方は是非目を通しておいてくださいね。

また、非居住者になると税金の面でどういったメリットがあるのかについては、「海外移住で税金を安く抑えるには? | 移住時の税金の取り扱いから移住後の税金まで徹底解説」 でわかりやすく説明をしているので参考にしてみてください。

非居住者になるためのStep1: 出国前の手続き

まず海外移住を検討する際のファーストステップ出国前の手続きを済ませることになります。海外移住を検討する際に最も大切なのは、まず住民表を残すか残さないかを決めることです。

住民票を残すか残さないかを決めよう

まず海外移住を検討する際は、住民票を残すか残さないか(抜く)かを決定しましょう。住民票を抜くか抜かないかの違いによって住民税が残るかが決まります。非居住者になるためには必ず住民票を抜く必要がありますので、ご注意ください。

住民票を抜くメリット

住民票を抜くメリットは以下3点になります。

①国民年金の加入義務がなくなる

住民票を抜いた際は国民年金の加入義務がなくなります。国民年金とは、将来年金としてお金を受け取るために、日本国民が払い込むべき保険料です。どれだけ将来年金が必要なくとも、住民票が日本にある限り支払わなければならない保険料が公的年金です。海外移住の際に住民票を抜けば、国民年金の支払い義務がなくなります(令和3年度の国民年金保険の金額は16,610円) 。将来の年金のために支払いを続けたい場合は、任意加入という制度を利用することもできます。こちらは老後のプランに合わせてご検討することをおすすめします。

②健康保険の加入義務がなくなる

住民票を抜いた場合には健康保険の加入義務が消失します。そのため日本に立ち寄り病院にかかった際には、10割負担の医療費が請求されてしまいます。ここまでの説明だとデメリットだけに感じてしまうかもしれませんが、代わりに住民税の納付義務もなくなります海外移住を検討される際は、海外での税優遇を享受するために移住するパターンが多いため、住民税の納付義務がなくなるのは大きなメリットといえるでしょう。
健康保険は、後に説明するクレジットカードの付帯保険や、別途民間保険を契約することでカバーできます。このタイミングに合わせて、今後の医療保険についても検討するのをおすすめします。

③住民税の納付義務がなくなる

住民票を抜いた際には、住民税の支払い義務がなくなります。海外移住を検討する際の最も大きなメリットは税金が減ることですから、住民税の納付義務がなくなるのは大きなメリットといえます。一方で、住民税は前年度の年収を基準に決めるもため、1月1日時点で日本に住んでいた場合は、海外移住後にも1年間は住民税の支払いが残ってしまうことを理解しておきましょう。

住民票を抜くデメリット

次に住民票を抜くデメリットは以下2点です。

①医療費用が10割負担になる

住民票を抜いた際は、日本での医療費が10割負担になってしまうことがデメリットといえます。しかし、退職後も任意で2年間までは保険に加入できる制度を整えている会社などもありますので、勤め先がどういった制度を整えているか確認することをおすすめします。また、そうしたケースに当てはまらない場合、民間保険を検討しましょう。

 ②老後に受け取れる国民年金額が小さくなる

国民年金の任意加入をした場合にはこのデメリットは解消されますが、国民年金の払込期間が短い分だけ老後に受け取れる年金額は小さくなります。
海外移住の際は、今までの説明の通り、まずは住民票を抜くか抜かないかで大きくこの後の手続きが変わりますので注意が必要です。本記事では非居住者になるために住民票を抜いた前提での手続きを説明します。

国外財産調書の提出をしよう

海外に多額の国外資産・所得がある場合、移住にかかわらず国外財産調書の提出が必要になります。国外財産の価額が5,000万円以上ある場合は、その種類、数量、価額などを翌年の3月15日までに所管の税務当局へ届け出る義務があるという制度です。特に富裕層の資産については、税務当局は目を光らせていますので、必ず国外財産調書の提出をするようにしましょう。

住民税の計算をしておこう

住民票を抜いた際であっても、1月1日時点で日本に在籍していた場合、1年間は住民税の支払いが課されます。この場合、住民税分のお金を用意しておく必要がありますので、必ず計算し手元に残しておくようにしましょう。この際の支払いは、会社員の場合は会社が天引きしてくれる場合もありますし、個人事業主の場合には納税管理人を指定して納付を代行してもらうのが一般的です。納税管理人については後述で詳しく説明します。

クレジットカードを作成しておこう

海外移住を検討する際には必ず2~3枚のクレジットカードを作成しておきましょう。クレジットカードを作成する理由は以下の通りです。

①海外での生活に不可欠だから

クレジットカードは海外での生活に不可欠です。旅行の経験がある方であれば想像はわくかと思いますが、海外においては現金を持ち歩く方がリスクです。そのため必ずクレジットカードを作成するようにしましょう。また、1枚しかクレジットカードがないと、万が一盗難などにあった際、その後の生活ができなくなります。クレジットカードは盗難にあった際でも適切に対処すれば保険の適応となることが多く現金よりも安全です。リスクヘッジの意味も込めて、海外では分けて管理するようにしましょう。

②保険として

クレジットカードには付帯保険がついているケースが多いです。住民票を抜いた場合、何かあった際に日本で治療をすればいいという選択肢は取れなくなります。このため、目的に合わせた付帯保険がついているクレジットカードを何枚か契約するようにしましょう。

③今後作れなくなる可能性があるから

住民票を移して非居住者になってしまうと、クレジットカードが作れなくなる可能性が高くなります。居住者であるうちに必ずクレジットカードを作ることをおすすめします。また、会社員から独立して海外への移住を検討している場合、会社員であるうちにクレジットカードを作ることをおすすめします。

銀行口座の確認をしよう

非居住者になると既存の銀行口座を使えなくなる可能性があります。また、一部制限がかけられて今までのように使えなくなるケースも多々あります。このため、既に利用している銀行が非居住者に対応しているかは必ず確認しましょう。もし非居住者に対応していない場合、非居住者に対応している銀行で口座開設をする必要があります。この際、海外からでも利用できる24時間対応のネットバンキングの口座があると今後便利なので、各種手続きがネットで行える銀行を選ぶようにしてください。

証券口座を解約しよう

証券会社は日本国外で金融商品取引業務を行う許可などを海外の監督官庁等から得ていないため、基本的に非居住者は口座を閉鎖する必要があります。必ず出国前に準備をしておきましょう。

公共料金の解約をしておこう。

公共料金についても解約が必要になります。水道、ガス、NHKへの支払いをしている場合は事情を説明した上で必ず解約するようにしましょう。万が一解約をしていない場合、料金が無駄にかかってしまう可能性があるばかりか、相続税などの税金面で不利益を被る可能性があるので注意が必要です。非居住者として正式に扱われるためには、なるべく日本に住居の痕跡を残さないことが大切になります。

 医療を最大限活用しよう

医療については健康保険がある内に最大限利用するようにしましょう。特に注意すべきは歯医者です。クレジットカードの付帯保険にも歯にかかる治療はカバーされていないケースが多いため、虫歯などがある方は必ず出国前に直すようにしましょう。他にも、持病がある場合などは医師に相談し、多めに薬をもらうなどの準備が必要になります。

非居住者になるためのStep2: 出国時の手続き

出国時には以下3点の手続きに気をつけましょう。

国外転出時課税制度(出国税)の支払いをしよう

株式など所得税法に規定される有価証券の含み益資産が1億円以上ある場合、出国税の支払いが必要になります。
国外転出の際に、有価証券の譲渡があったものとしてみなされることが理由です。
2021年7月時点では仮想通貨の含み益は現状課税はありません。しかし、税制は変わることがありますので、特に仮想通貨の含み益が大きい方は、早めに海外移住を検討することをおすすめします。
また、出国税には納税猶予制度があります。
・国外転出の際の確定申告書に納税猶予の記載があること
・納税猶予に相当する担保の提出をすること
・納税管理人の届け出をすること
上記を満たした場合、5年間の納税猶予を受けることができます。特に資産を多くお持ちの方は必ずチェックするようにしてください。

確定申告をしよう

海外移住をする際は確定申告をする必要があります。確定申告とは1/1~12/31までの所得金額に応じた税金を申告する制度です。本来は翌年の2/16~3/15までに過去1年間の所得や経費を申告すればいいのですが、非居住者になるということであれば事前に確定申告を行う必要があります。また、納税管理人の指定をすることで、納税管理人に手続きを依頼することもできます。

納税管理人制度を利用しよう

出国の際には納税管理人を指定するようにしましょう。納税管理人とは、対象者が日本の非居住者となった場合に、国内源泉にかかる税金の手続きを代行したり、書類を代理で受け取ったりする制度です。納税管理人には日本に住んでいる家族や税理士などを指定できます。日本に源泉がある場合は、税理士を納税管理人に指定するとよいでしょう。

 非居住者になるためのStep3: 出国後の手続き

出国後、目的地についたら必ず在留届を届け出るようにしましょう。在留届は何かしらの緊急事態(例えばテロなどの安否確認)が発生した際に安否などを確認するために利用されます。安否の確認が取れない場合は、継続しての捜索がかかり、日本の家族などにも迷惑をかける可能性があります。また、日本大使館などで書類を日本から取り寄せる場合には在留届の提出が条件となる場合もあります。
なるべく早めに届け出るようにしましょう。

まとめ

本記事では出国前に必ず行っておくべき手続きを徹底解説しました。本記事では触れていませんが、そもそも海外移住をする際はどこの国にするのかお悩みの際は、以下の記事をご覧いただくとヒントになるかもしれません。
「海外移住で税金を安く抑えるには? | 移住時の税金の取り扱いから移住後の税金まで徹底解説」
特に相続税対策で海外移住を検討する際は、その国ならではの税制や注意点もあるので、必ず確認する用にしてください。

安全に海外移住をしたい方へ

税の分野は毎年のように税制改正があり、素人の付け焼刃では節税目的で海外移住したつもりが脱税になっていることも多く、「国際税務」という非常に高度な知識が要求されます。

もしあなたがもっとも安全かつ効率的に海外移住をしようと考えているとしたら、行うことはただひとつ。

それは、「海外移住に強い専門家」に相談することです。

弊社では、監査法人や外資系コンサルティング、元国税庁出身など豊富なキャリアを持つメンバーが海外展開を全力で応援します。

なお、当社は海外移住などの国際税務に特化したアドバイザリー集団ですので、顧問税理士の方が別にいらっしゃっても構いません。

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