この記事では、ドバイへ移住を検討されている方や税金の観点から移住する国を探している方を対象に、ドバイへ移住するための具体的な手続きや検討事項について解説していきます。
この記事を読むと、ドバイという国の魅力、ドバイでの法人設立方法、ドバイの税制度の概略について理解することが出来ます。
Contents
ドバイとはどのような場所なのか?
ドバイは面積が3,885平方センチメートル、人口は約350万人ほどの国です。これは日本でいうと埼玉県の広さに該当します。埼玉県の人口は700万人ほどなので、人口が半分の埼玉県と考えるとざっくりの規模感がイメージ出来るかと思います。
また、よく誤解されやすいのですが厳密には「ドバイ」という国はありません。正確に言うと「UAE(アラブ首長国連邦国)」という連邦国の中の1つを構成している首長国です。
UAEはドバイ以外にも、首都アブダビやベッドタウン的地区のシャルジャなど、全部で7つの首長国から成り立っています。
7つの首長国の中でもドバイはとくに発展しており、立ち並ぶ高層ビル、一流のホテルやレストラン、一流セレブの別荘地などが点在し、世界中のマネーがここに集まってきています。
ドバイがこれほどまでに発展してきたのには理由があります。
1つ目は豊富なオイルマネー。
UAEを含む中東には豊富な石油の埋蔵量があります。
石油貿易で獲得したオイルマネーを資金源として、ドバイは急速な発展を遂げてきました。そういった理由から、ドバイは国民の所得水準も高く資金流通量も多いため、ビジネスを行う場所としては最適です。
2つ目は「世界一」に特化した観光地政策です。
ドバイでは「世界一高い建物(ブルジュ・ハリファ)」「世界一の噴水(ドバイ・ファウンテン)」「世界で最も高い位置のプール」など、数多くの世界一を意図的に作ってきました。
世界一の観光地は多くの観光客を呼び、SNSで拡散され、さらなるインバウンドマネーを引き寄せます。観光業で獲得した資金はドバイ国内で不動産や事業に投資され、さらなる発展を遂げていきます。
<ブルジュ・ハリファ>
https://go-enrichinglife.com/burj-khalifa-time-1610.html
<ドバイ・ファウンテン>
そして最も重要な点は、税金面で非常に優遇した政策を取っていることです。
2022年現在法人税は0%。タックスヘイヴンならぬ、税金0のタックスフリーの国です。
個人の所得税や資産税(相続税・贈与税)もなく、キャピタル・ゲイン(売却益)に関する税金もありません。2023年より諸外国との関係を考慮し法人税率のみ9%となりますが、それでも先進国の中では異例の水準です。
税と呼ばれるものとしては、2018年からVATと呼ばれる消費税5%だけ。富裕層からすると夢のような国といえるでしょう。
なぜこのような税制度をとっているかというと、世界中の富裕層を誘致するためです。ビジネスが場所にかかわらず出来るようになったいま、税金の高い国に居続ける理由を失った富裕層が移住し、マネーがドバイに流れ込んでいるのです。
この流れは、現在も弱まるどころかさらに勢いを増してきています。2022年現在富裕層から今最も注目されている国といっても過言ではないでしょう。
そういった魅力あふれるドバイですが、ビジネスや税金の観点でドバイに移住するには具体的にどのような手続きを取ったらよいのでしょうか?
具体的なステップは以下の通りとなります。
1.ビザ(入国許可証)の種類を決定する
2.現地法人を設立する
3.就労ビザ取得し、現地での口座開設や不動産の契約等を行う
4.日本側の非居住者要件を満たす手続きを行う
次の章で1.~4.のそれぞれについて順番に解説していきます。
ドバイ移住までの具体的な手続き
1.ビザ(入国許可証)の種類を決定する
ドバイに移住するためには、まずはドバイに住めるビザ(入国許可証)がなければいけません。
なので、まずは自分に合った最適なビザを取得することを考える必要があります。
ドバイで一般的によく認知されているビザは以下の3つがあります。
②不動産ビザ(長期滞在ビザ)
③ワーケーション・ビザ
このうち、不動産ビザは資産要件と一定の要件を満たす不動産を買うことで取得可能になります。
長期(3~5年間)の滞在が可能であり一見使い勝手がよさそうに思えますが、厳格な居住用ビザであるため、現地で事業を行うことは出来ません。また、それなりの資産と収入の証明が必要になります。
完全に事業をリタイアし、ドバイでゆっくり過ごしたいという方にとってはお勧めのビザになりますが、ビジネスや税金の優位性を生かしてまだ働きたいという方にとっては物足りないでしょう。
ワーケーション・ビザは比較的最近できたビザで、非常に簡単な手続でビザを取得することが出来ます。
しかし、どこかで仕事の本拠地がありリモートで仕事を行うというあくまで「ワーケーション」ビザのため、ドバイを本拠地として活動出来ないという点で税務メリットを取るには向いていません。
また、ビザが1年と非常に短期のビザであることも、「短期間滞在者」とみなされ不利になりやすいです。
一方で、就労ビザについては不動産ビザのように多額の資産要件は不要です。
また、3年更新の長期ビザを取得することが出来ます。
自分で事業を興すこともできますし、配偶者ビザを取得することで家族全員で移住することもできます。
これらをまとめると、以下の通りです。
不動産ビザ | 就労ビザ | ワーケーション・ビザ | |
滞在年数 | ◎(3~5年) | 〇(2~3年) | ×(1年と短い) |
資産要件 | ×(富裕層のみ) | 〇 | 〇 |
税務メリット | △(就労不可) | ◎ | ×(短期滞在者) |
家族での移住 | 〇 | 〇 | 〇 |
コスト | ×(高額) | 〇 | ◎ |
こういった観点から、ビジネスや税金面で移住を検討している人にとっては「就労ビザが最適な方法である」と言えます。
「就労ビザって?どこかの会社で雇用されて働くってこと?」
と思われるかもしれませんが、そうではありません。
自分で会社を設立して、自分が代表として働くことも出来るのです。
ドバイに知り合いがおり就労ビザを発行してくれる会社を持つ知人がいれば問題ありません。
しかし、そういう方は多くはないでしょう。
今回は、自分ひとりで完結出来る「会社を設立して、自分にビザを出す方法」について解説していきます。
2.現地法人の設立について
ドバイには大きく「メインランド」「フリーゾーン」の2つの形態があります。
メインランドとは現地で法人設立し、現地向けに事業を行うような会社です。
日本で言うところの普通の株式会社に近いです。
一方で、フリーゾーンとはドバイ国外の企業の経済特区であり、海外に向けて事業を行う法人を指します。
フリーゾーンはUAE国内だけでも43か所もの選択肢があり、非常に発達しています。税金も完全に免除されており、タックス・メリットを享受したい多くの資金が流入してきました。
こういった理由から長年の間フリーゾーンが人気でしたが、2020年にメインランドの外資規制が解除され、ほぼフリーゾーンと同様のメリットが得られるようになりました。
そういった経緯もあり、近年では「メインランド」での設立が主流になっています。
一方でメインランドでは行えないような規制産業の場合は、引き続きフリーゾーンでの設立を行うことになります。
例えば、暗号資産やNFT事業などは現地向けの事業とはいえないことから、メインランドでは原則として業務を行うことが出来ません。そういった場合はフリーゾーンでの法人設立が最適な選択肢となります。
なお、メインランドで法人設立を専門家に依頼した場合のイニシャルコストは約200万円(1AED=35円で計算)で、フリーゾーンの場合は約270万円~です(業種によっても変動します)。
これに初年度のビザ費用を考えると、だいたいメインランドでは総額で約220万円ほど。
仮にフリーゾーンでの設立だとしても一般的な業種であれば約300万円ほどあれば移住が可能になります。
「ドバイ移住」という当初のラグジュアリーなイメージから考えると、思ったほど高額ではないのではないでしょうか?
当事務所でも上記金額でサポートさせて頂くことも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
3.法人設立後、ビザ取得や移住の準備をする
法人設立が完了すると、e-visaと呼ばれる就労ビザを自分に発行できるようになります。
これによりドバイに自由に滞在することが出来るようになります。
家族にも配偶者ビザを発行できるようになり、家族でドバイに移住する準備が出来る準備が出来るようになります。
また、エミレーツIDと呼ばれる身分証明証を取得出来るようになり、現地で居住する不動産の契約も可能になりドバイ国内での口座開設(法人・個人)も可能になります。
銀行口座開設については、どの国もマネー・ロンダリング対策などの観点から近年非常に難しくなってきていますが、ドバイでは、他のいわゆるタックス・ヘイブンと呼ばれる国にくらべると比較的簡単に口座開設ができます。
例えば、マレーシア・ラブアンや香港などの代表的なタックス・ヘイブン国では近年銀行口座開設が非常に困難であり、法人が設立できたとしても実質的に稼働できないことも多くあります。
その点ドバイではまだ十分スムーズに手続きが出来ます。
法人設立手続きから口座開設まで、概ね1カ月半あれば完了します。
弊所はドバイ移住の専門家として、エミレーツID取得、口座開設、不動産の手配、国際運転免許証など、生活に必要なすべての手続きを最短で代行することが可能です。
4.日本側の非居住者要件を満たす手続きを行う
ここまで完了したら移住まであとすこし。でも、最後に忘れがちなのが日本からドバイに移住する際の税務手続きです。
これが漏れてしまうと、日本の居住者と認定されてしまい日本で税金がかかってしまうリスクがあります。
よく言われるのが、
「住民票を抜いていれば問題ないだろう」
「海外でビザを取っているから日本側では居住者ではないだろう」
「一年のうち180(183)日以上海外に住んでいるから問題ないだろう」
というものです。
はっきりいってしまうとこれらはすべて間違い(というより十分ではない)です。
日本の税務署は形式ではなく、実態を見て判断します。
個々の手続きが完了していても、実態として現地に住んでいないと認識されれば日本で課税されます。
手続や書類を丁寧に吟味し、ストーリーを考え、客観的な根拠をもってドバイに移住した意味を税務署に説明する必要があります。
また、手続きが一つでも漏れてしまうと非常にやっかいです。
例えば「納税管理人の選出の届出」という手続きがありますが、これを出さずに海外に移住してしまうとその時点で「納税漏れ」となります。
海外移住する場合、納税管理人を選出しておかない場合は出国の日までに確定申告を完了しておかなければならないためです。
また、1億円を超える含み益がある株式については譲渡したものとして確定申告しなければなりません(出国時精算課税)。中小企業のオーナー経営者が特に漏れてしまいやすい手続きになります。
上記のようなトラブルは一例で、
「移住後の相続税は?」
「日本に住んでいた時の不動産の家賃収入は?」
など、移住前・移住時はもちろんのこと、日本から移住した後も税金は切っても切り離せない存在なのです。
そういった税金周りをすべて綺麗に対応するのが、我々国際税理士の役割でもあります。
将来忘れたころに税務署の世話にならないためにも、出来る限り出国の時点から税の専門家に任せることをおすすめします。
まとめ
ドバイという国の魅力、ドバイの税制度や移住方法について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
最後のほうでは税に関する説明も多く、ドバイ移住には色々と手続きや税務面などハードルが高そうだと思われたかもしれません。
しかし、手続面や税務面をしっかりと丁寧に対応していくことで、リスクを抑えつつ税金面やビジネス面の莫大なメリットを享受することも出来ます。
ドバイ移住を検討されている方は、まずは一度初回面談よりお問い合わせください。