オーストラリア

オーストラリアは日本から比較的近く、時差も1~2時間ほどしかありません。また、治安が良い、気候がいいなど移住先として魅力的な面がたくさんあります。オーストラリアに移住を検討中の方も多いのではないでしょうか。

今回は、オーストラリアは日本からの移住先として向いているか、税金に注目して考察しました。主な税制度や社会保障制度、節税制度などをご紹介するので、オーストラリア移住について考える際の参考にしてみてください。

オーストラリアの主な税制度

オーストラリアにも日本と同様に、消費税や所得税、法人税などいくつかの税制度があります。

消費税

オーストラリアには、日本でいうところの消費税にあたる、GST(Goods and Services TAX)と呼ばれる税金があります。

オーストラリアの消費税率は一律10%です。 ただし、生活必需品には税金がかからないシステムになっています。消費税がかからないものの一例は、以下の通りです。

食料品医、療費教育費、上下水道費、個人の住宅購入費、チャリティ寄付金 など

生活必需品には消費税がかからない一方で、必需品とみなされないものには消費税がかかるため注意が必要です。例えば、レストランなどで販売されている飲食物は消費税の課税対象となります。

また、スーパーで売られているパンでも、少しでも手が加えられた菓子パンなどは課税対象です。あくまで「生きていくうえで必要となる最低限のもの」には、消費税がかからないと考えておきましょう。

所得税

所得税は、居住者に発生する税金です。税率は「居住者」と「非居住者」で異なります。永住権を取得し移住する場合は、ほとんどのケースで「居住者」に該当することになるでしょう。

学生ビザを使用し日本と行き来する際には、学校に通う期間で税率が変わります。居住形態に該当する対象者条件と、2021年現在の所得税率は以下のようになります。

【居住形態に該当する対象者条件】

対象となる方
居住者 永住権所持者、ビジネスビザ、27週以上の学生ビザで滞在している方
非居住者 26週以下の学生ビザで滞在している方

【居住者の所得税率】

課税所得(豪ドル) 税率
0-18,200 なし
18,201-45,000 19%
45,001-120,000 32.5%
120,001-180,000 37%
180,001以上 45%

【非居住者の所得税率】

課税所得(豪ドル) 税率
0-120,000 32.5%
120,001-180,000 37%
180,001以上 45%

なお、オーストラリアでは7月1日~6月30日が会計年度です。源泉徴収されすぎた場合や、追納が必要な場合にはタックスリターン申請(確定申告)できます。

タックスリターンの申告期間は、7月1日から10月30日です。申告期限が切れるとペナルティが発生する恐れがあるので気をつけましょう。

法人税

法人税の税率は原則30%(一定収入以下の小規模企業は25%)です。居住会社か非居住会社かで課税対象になる所得の条件が異なります。

・居住会社
オーストラリアで設立した法人は、国内源泉所得に限らず、国外源泉所得やキャピタルゲインを含めたすべての所得が課税対象となります。※国外源泉所得には外国で支払われた所得税の税額控除あり

・非居住会社
国内源泉所得や資産に対するキャピタルゲインのみが課税対象となります。

相続税

日本では、遺産相続の際に相続税が発生します。相続税の計算は複雑さがあり、申告にもさまざまな書類が必要となるため、相続税対策にオーストラリアへの移住を検討している方もいるのではないでしょうか。

オーストラリアには相続税制度がありません。遺産を相続しても相続税申告し納税する必要がないため、資産が多い方はオーストラリアに財産を移しておけば節税効果を期待できます。

ただし、相続財産のキャピタルゲインに対しては所得税が発生します。キャピタルゲイン課税は、購入時と相続時の時価が発生した際に、差額分が課税対象となる制度です。不動産や株式を所有している場合は気を付けましょう。

州税

オーストラリアの各州に支払うのが州税です。州税には、「給与税」「地税」「印紙税」などがあります。各税制度の内容は以下の通りです。

税の種類 対象 内容
給与税 州や準州の定めている総支払額を超えた場合 ・給与を支払う雇用主に課せられる税金

・税率は毎月の給与支払額に応じて計算される

地税 ノーザンテリトリー以外の州に住む方 ・土地を所有している方が州に対して支払う税金

・税率は不動産評価額によって異なる

印紙税 対象となるものを譲渡や売却した場合 ・国内の土地に関する権利や事業資産、保険や自動車などの取引の際に発生する税金

・税率は州や準州によって異なる

社会保障制度

オーストラリアに移住する際には社会保障制度についても確認しておくと安心です。

所得保障制度

オーストラリアの年金制度は、日本と同じく2階建てになっています。

日本の国民年金に値する「社会保障制度」は、65歳以上の方に支払われる老齢年金です。税金を財源とし、これまでの収入や資産状況などさまざまな条件を鑑みて支給金額を決定します。

また日本の厚生年金保険に値する年金制度は、「退職年金保障制度(スーパーアニュエーション)」と呼ばれています。スーパーアニュエーションにはいくつか節税制度があるので、税金対策として活用できるでしょう。

医療保障制度

オーストラリアには、保険料(課税所得の2%)を支払う代わりに医療費が無料になる「メディケア」という公的国民健康保険があります。

オーストラリアの国籍保持者や永住権取得者などが加入できる保険です。

一般開業医であるGPや公立病院であれば、診察や治療の際にお金がかかりません。ただし、歯科治療や眼科診察などは保障の対象外となっています。

そのためオーストラリアでは、民間の医療保険に加入する方も少なくありません。民間の医療保険に加入することで、「診察・治療する病院や医師を選択できる」「自分のタイミングで入院できる」「メディケアの対象外となる項目の診療や治療にも保険が適用できる」といったメリットがあります。

社会福祉制度

オーストラリア国籍がある方や永住権保持者の場合、公立学校の学費は無料です。高校や大学も、国から指定のあるところを選べば、無料か通常よりも安く授業を受けられます。

オーストラリアの義務教育期間は州によって異なります。ケアンズやゴールドコーストがあるクイーンズランド州では、Prep(5歳)からYear10(16歳)までが義務教育期間です。日本に比べると少し長くなっています。

またオーストラリアは教育水準が高いといわれており、イギリスの大学評価機関が公表している「QS世界大学ランキング」では、オーストラリアの大学が7校ランクインしています。世界で3番目に留学生が多い国ともいわれており、世界各国から優秀な学生が集まるのが特徴です。オーストラリアは子育てにも適した移住先といえるのではないでしょうか。

スーパーアニュエーションの節税制度

節税

オーストラリアに移住する際には、税金をおさえながらしっかりと貯金できるようあらかじめ節税制度を確認しておきましょう。ここでは、税金対策に活用できるスーパーアニュエーションの制度内容と節税制度をご紹介します。

スーパーアニュエーションとは

オーストラリアでは「退職年金保障制度(スーパーアニュエーション)」という制度を活用しています。働いている間に、退職後のためのお金をスーパー口座に預け入れ、資産運用していく制度です。日本でいう厚生年金に似ています。

加入対象者は、1ヵ月の給与が450ドル以上になる方です。雇用主が就業者の給料の9.5%をSuperFundに預け入れし、SuperFundが資産運用することで財源を確保しています。

また、投資するFund会社は自分で選択することも可能です。なお、スーパーアニュエーションに預けたお金は、原則65歳を迎えるまで引き出すことはできません。

節税制度

スーパーアニュエーションには節税効果の高い制度が複数ありますが、ここではその中から3つをピックアップしご紹介します。

・Spouse Contribution Tax Offset
配偶者のためにスーパーアニュエーションの積み立てをすると、振込額の18%が税額控除できる制度です。配偶者の収入が、総額で$40,000以下であることが条件になっています。

・Government Co-Contribution
低所得者に対し、政府が最大50%追加でお金を積み立ててくれる制度です。総収入が$39,837以下の方には、50%を口座に振込してくれます。$54,837以上の収入がある方は対象外となります。

・Salary Sacrifice
給与の一部を追加でスーパーアニュエーションに預けることで、課税対象となる所得を減らすことができる制度です。年間$25,000までが限度となっています。納める所得税を減らし退職後の資金を増やせるので、税金対策として利用価値の高い制度といえるでしょう。

まとめ

税金の面から見たオーストラリアのメリットは、相続税がなく社会保障が充実している点です。

年金制度が特に充実しており、オーストラリアでは老後に対する不安や心配を感じる方が少ないと言われています。

オーストラリアの税制度や社会保障制度を上手く利用できれば、移住先にも適しているのではないでしょうか。

ただ、オーストラリアでこのような手厚い保証を受けるためには、オーストラリア国籍か永住権を取得する必要があります。ビジネスビザや学生ビザでの滞在では、受けられる社会保障制度や納税額も異なるので注意しましょう。

移住先を選ぶ際には今回の記事もぜひ参考にしてみてください。

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